天理市長が公務で東京に出張中、派遣型風俗を利用したことが話題になっています。
同氏は自費で利用したことや、報じられていたような禁止行為を要求したことはないとのことですが、一部には公務で訪れたホテルで派遣型風俗を利用するのは市長にふさわしくないという声もあり、意見がわかれているようです。
■企業にマイナスイメージを与える社員も存在
出張中に派遣型風俗を利用することの是非はさておき、天理市長が一部の有権者にマイナスイメージを与えたことは間違いないようです。
一般社会の場合、出張中所属企業にマイナスイメージを植え付けるような振る舞いをした場合、会社から処分を受ける可能性があります。
それが続けば、懲戒免職処分などもありうるかもしれません。それはある種致し方ないと思われますが、企業に迷惑をかけないまったく個人的な「素行不良」が続いた場合はどうなるのでしょう? 会社は当該社員に罰則や解雇などの処分を下すことができるのでしょうか?
銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。
■業務時間以外の素行不良社員に罰則や解雇などの処分を下すことはできる?
「実務上、懲戒処分は従業員の企業秩序違反行為に対する制裁であると捉えられているので、私生活上の非行に対して懲戒処分をすることもできることになっています。会社に関係なく、破廉恥な行為を行ったような場合、懲戒解雇になった事例をよく聞くことがあると思います。
ただ、あまりにも会社が従業員の私生活に首を突っ込むのは、私生活における行動の自由を不当に制限することになるので、その辺の限界は重要なポイントになってくるかと思います。
この点、判例は以下の様に判示しています(最判昭和49年3月15日、日本鋼管事件)。
「営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは,会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから,会社の社会的評価に重大な影響を与えるような従業員の行為については,それが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても,これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない」としつつ,「しかして,従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには,必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが,当該行為の性質,情状のほか,会社の事業の種類,態様,規模,会社の経済界に占める地位,経済方針及びその従業員の会社における地位,職種等諸般の事情から総合的に判断して,右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」
過去の判例を眺めてみますと、交通事故を除く一般刑事事件、特に破廉恥罪などでは、懲戒解雇処分を有効とするものが多いですね。
社内の不倫、セクハラに伴うトラブルも、懲戒解雇処分を有効とするものが多いようです。
それ以外の素行不良ですと、会社の社会的評価をどの程度下げたのかによりけりですが、解雇よりも低い懲戒処分なら有効と判断されるものもありそうですね」(小野弁護士)
過去の判例を見ると、やはり私生活の素行不良であっても解雇されることはあるそう「会社外だから良いや」という考えは、一般社会では通用しないのですね。
*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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