解決が困難な「派遣社員の雇い止め」裁判…実家がお寺の弁護士が和解できた理由とは?

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「しいの木法律事務所」の八坂弁護士に、弁護士を目指したきっかけや、長年の弁護活動の中でも印象深かったという派遣社員の「雇い止め」裁判のエピソードを中心に、お話を伺いました。

八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士
東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。

*八坂弁護士のインタビュー記事

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和解が難しい「行政事件」…弁護士が語る住民や支援者と一体になって戦う方法

 

■実家がお寺!? 保護司でもある父に受けた影響とは

___弁護士を目指したきっかけについて教えてください。

私の父親は禅宗の住職で、実家は大分県でお寺をやっていました。お寺には、檀家さんをはじめ、色々な人がきて、父に困ったことを相談しにやって来ていました。また、父は保護司という社会奉仕活動にも熱心でした。保護司とは少年院や刑務所に収容されていた人が、釈放後スムーズに社会復帰できるように、一時的に住居を提供や、生活上の助言や就労のサポートを行う人のことです。なので、私の家には常に「このお兄さん誰?」「このおじさん誰?」といった感じで、知らない人がよく寝泊まりしていたのです。

当時は、そんなお寺での生活が嫌で仕方がなく、私は東京の大学に入り、弁護士を目指しました。なぜ、弁護士を目指したかというと、実のところ、学生時分に他にすることはなかったからなのですが、今思えば弁護士を目指そうと思うきっかけの根底には、困っていた人を助けていた父の影響があるのだと思います。

 

___仕事における信条、ポリシーについて教えてください。

弁護士法に書いてあるようなことになりますが「依頼者の正当な権利を実現するために全力を尽くします」というのが、私の信条です。

 

■「死にたい…」と嘆く派遣社員の「雇い止め」裁判を和解に導く

___弁護士になってから印象深いエピソードについて教えてください。

弁護士活動をしていて嬉しいのは、依頼者も一生懸命頑張るし、弁護士も一生懸命頑張って、依頼者の利益になる成果が獲得できたときですね。

ただ、正直なところ、苦しいと感じることのほうが多いですね。私は過去に、依頼者が弁護活動中に自ら命を絶たれるという、とてもつらい経験をしたことがあります。そのとき、命がけの思いで弁護士に助けを求めて来ている依頼者もいるのだということを、身にしみて感じました。

もちろん、悲しい出来事ばかりではなく、依頼者が苦しんでいる事件が、良い方向に向かうということも沢山あります。以前、「雇い止め(※)」によって解雇されてしまった派遣社員の方を弁護したことがあります。その方は、あまりにも追い詰められて「私、死にたいです」といったことも口にしており、一体どうなることかと非常に心配していたケースでした。この事件は、派遣労働者が、派遣先のパワハラについて派遣元に改善を訴えたら、派遣契約を解除されてしまったという、とても難しい類型の事件でした。しかし、なんとか和解で解決することができて、依頼者本人も満足してもらえました。それはとても嬉しかったですね。

こうした派遣社員の雇い止め問題は、大抵の場合、裁判を起こしても勝てないので、多くの方が泣き寝入りしていると思います。派遣先との直接の労働契約が成立することは、ほぼあり得ないという、あまり良くない最高裁の判決が確定してしまっているので、こうした問題で裁判の成果を得るのは難しいのです。ですからなおのこと、解決したときは心の底から良かったなと思いましたね。

※雇い止め…雇用期間が定められた有期雇用契約において、雇用期間を更新せずに契約を終了させること。

 

■弁護士には医師のような応召義務はないが…

___読者の方にメッセージをお願いします。

法律事務所にも、ビジネスとして儲けていかなければいけない側面があるのも事実です。医師には、応召義務(診療を求められたとき拒んではならないとする義務)があるのですが、弁護士の場合には受任義務がないので、儲からない事件は引き受けなくても良いのです。ですから、行政事件や労働事件といった利益があまり得られないケースが多い事案を、避ける傾向にある事務所も実際には存在します。もちろん、利益が少ないから受任しないと口に出せば問題がありますが、黙って受任しない分には問題ありません。しかし、それは職業倫理的には、良くないことだと思っています。

当事務所は、もともと儲かっていないので、利益が良いか悪いかなんて考えていません(笑)。西武新宿線の野方駅という各駅停車しか止まらないような地域にあるので、それでもやっていけます。

気軽に法律事務所に相談にいくというのは、なかなか難しいことだと感じる人も多いと思いますが、私たち「しいの木法律事務所」は、相談しやすい法律事務所だと自負していますので、他の事務所で、あまり話をきいてもらえなかったといった嫌な経験を持っている人の事件についても、きちんとお話を伺います。ですので、どうぞ安心して相談においでくださいということを伝えたいですね。

 

 

*取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士
1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。

■「しいの木法律事務所」一問一答【Q&A】

___事務所の理念を教えてください。

「依頼者の正当な権利の実現のために、全力を尽くします。」ということですね。それと、地域に密着した法律事務所として、地域の方のどんな相談にでも対応できるように心がけています。

___一番依頼が多い分野は何ですか?

相続関係です。次には、行政事件、成年後見問題、事業者の顧問契約といった感じですね。

___初回の相談料はいくらですか?

初回の相談料は30分まで無料にしています。それを超える場合は30分単位で5,400円いただいています。

___着手金と報酬金の目安は?

相続問題の場合、仮に法定相続分が900万円あると予想される人から依頼をうける場合には、その相続分の3分の1の300万円を基準として計算します。着手金が300万円×24%で、それに消費税の8%がかかり、25万9200円になります。報酬金がその倍で、51万8,400円です。最終的に900万円の法定相続分が確保できた場合は、着手金+報酬金になりますのでトータルで77万7,600円が必要になります。

以前は、弁護士費用の基準があったのですが、公正取引委員会から意見で、その基準がなくなりました。もともとの弁護士会の基準は、当事務所のように、依頼者の法定相続分の3分の1を基準として計算するという文言が入っていたのですが、現在は、法定相続分の900万円を基準として計算する法律事務所もあります。着手金は安くなっていても、トータルで計算すると、高い弁護士報酬を払っているという場合もあるので、弁護士費用を気にされている方は参考にしてみてください。

行政事件の場合は、着手金、報奨金については一概には言えないですね。その事件が難しいかどうかに応じて、例えば10万8,000円で受けることもありますし、54万円着手金もらうこともあります。

 

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

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*編集部

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