商談をキャンセルし子供の看病に向かった女性社員 会社の解雇処分に問題はあるのか?

商談をキャンセルして子供の看病に向かった女性社員 会社の解雇処分に問題はあるのか?

子育てをしながら保険の営業として活躍するHさんは、会社から解雇通告を受けました。その内容に、憤りを感じています。

 

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仕事中に子供が光熱

Hさんが解雇を通告されたのは3日前。営業の仕事中、突然学校から「子供が熱を出した」「念の為病院に連れて行く」と連絡がありました。

子供の様子が心配だったHさん。3時間後に商談を控えていましたが、契約に繋がるかどうか不透明なこともあり、電話で予定変更の連絡を入れ、病院に向かいます。

 

客が激怒し問題に

取引先が激怒

電話口ではとくに怒った様子のなかった商談相手ですが、「せっかく時間を取ったのにロクに理由も告げずに私的な理由で商談を断るとは何事か」と激怒。Hさんは上司に報告をしてなかったため問題になり、「クビだ。」と言われてしまいました。

Hさんは子供の高熱に取り乱してしまい、上司への連絡を怠ったことは自分の落ち度と考えていますが、「客に一応の説明をしているんだし、解雇は酷すぎるのではないか」と会社に抗議することを考えています。

この解雇は認められるのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に伺いました。

 

措置に問題はないのか?

川浪弁護士:

「会社による「クビの言い渡し」というのは、法律上、解雇の意思表示(労働契約の一方的解除)に該当します。この点に関して,解雇は,客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当といえなければ認められません(労働契約法16条)。

本件では、会社に連絡をせず、独断でお客様との商談をキャンセルしたことは適切な対応とはいえなかったと思いますが、このことだけを理由とした解雇は相当性を欠いている(処分として重すぎる)のではないかと考えます」

弁護士の目から見ても、この措置は「重すぎる」と感じるようです。

 

解雇を無効にできるのか?

「重すぎる」となると、女性は解雇を無効にできるということになるのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に伺います。

川浪弁護士:

「上述したとおり、解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当といえる場合でなければ、解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。

今回の事案で会社が女性を解雇した直接的な理由は「会社に連絡せず独断で商談をキャンセルしたこと」になりますが、女性によるこの行動自体に問題があることは既に述べたとおりです。もっとも、たった一度このようなミスをしたことをもって、解雇に値するほどの重大な義務違反行為、規律違反行為があったとはいえないと考えます。

また、商談キャンセルの理由が「子供の発熱」というやむを得ない理由であることも踏まえると、悪質性はない(低い)と判断されるでしょう。そのため、原則として、このケースによる解雇は無効と判断される可能性が高いと考えます。

もっとも、当該女性が従前に同様のミスや問題行動(業務命令違反など)を繰り返していた場合、当該女性に全く反省が見受けられない場合には、改善の余地がないと判断されて解雇が有効になる可能性は多分にあると思います」

 

女性の行動に問題はないのか?

解雇は「重すぎる」ようです。しかし女性の行動にも、問題があるように思えます。解雇とは行かなくても何らかの処分はできるのではないでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に聞いてみると…。

川浪弁護士:

「会社(使用者)と労働者は、労働契約を遵守するとともに信義に従い誠実に、権利を行使し、義務を履行しなければならないとされています(労働契約法3条4項)。

本件では、女性は、上記条項に基づく「誠実に労働をする義務」の一環として、特段の事情がない限り、事前に予約をした顧客との商談を予定どおりに行う義務を負っているといえます。そして、やむを得ない理由で自身が商談へ行くことが困難となった場合(特段の事情が存する場合)であっても、会社に損害が及ぶことを回避する観点から、他の社員が代わりに商談に行く機会を確保すべく、事前に会社へ連絡する必要があったと考えます。

そうすると、この連絡を怠っている点で、女性の行動は適切さを欠いていたと評価できます。子どもの急な発熱という理由は商談キャンセルの理由として合理的なものといえますが、そのことと会社へ連絡しなかったことの是非は分けて考える必要があります。

なお、今回のケースのような緊急時には速やかに会社に連絡するように予め指示されていた場合には、今回のケースの女性の行動は業務命令違反にもあたり得るところです。

いずれにせよ、女性に対する処分としては、当該女性が過去に同様の問題行動を繰り返していた等の事情がない限り、厳重注意程度にとどめるのが妥当と考えます。」

 

上司に連絡していれば…

Hさんへの解雇は重すぎるようですが、行動に問題があったともいえます。彼女がすぐに上司に連絡していれば、結果は違ったかもしれません。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

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