会社倒産を経験した弁護士が法律トラブルで「スピード感」を重視する理由とは

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大学在学中の2002年に、友人と共にIT系のベンチャー企業を設立した経験を生かして、現在でもIT企業のサポートを多くこなしている中野弁護士。弁護士になるまでの苦労や失敗が、今の業務にどう結びついているのか伺いました。

中野秀俊(なかの ひでとし)
弁護士グローウィル国際法律事務所は、元IT企業経営者であり現在も会社の経営者である中野秀俊弁護士が、クライアントにとって理想の法律事務所を実現したいという思いから設立。

 

*中野弁護士のインタビュー記事

「グレーだと意識することが著作権トラブルの対策に」…ITスキルに長けた弁護士が警鐘

「ITは法律トラブルの予防が最重要課題」…未然にリスクを防ぐ方法を弁護士が指南

 

■学生時代に立ち上げたベンチャー企業が倒産…その失敗から学んだものとは?

___弁護士を目指したきっかけについて教えてください。

私は、2002年に早稲田大学の政治経済学部経済学科に入学したのですが、入学して間もなく友人と二人でIT企業を立ち上げました。事業内容は、システム開発の受託から始まって、Webサービスを自分たちで立ち上げたりしました。友人と二人で共同代表をしながらエンジニアも営業も行うといった感じです。その学生ベンチャーは、一時期上手くいっていたのですが、大学4年のときに、倒産してしまいました。

倒産の一番のきっかけになったのが、インターネットを使った輸入事業の失敗です。これは、ネットで海外の商品を仕入れて売ると行ったサービスだったのですが、先に商品を売ってしまってから後から仕入れるというシステムをとっていました。しかし、このシステムが仇となり、結局品物が入ってこないことによって、取引相手との間で、違約金が発生してしまったのです。

当時は、きちんと契約書などにも目を通していなくてハンコを押していました。契約書の中には、かなり高額な違約金の条項もあって、それが払えないことでキャッシュフローがおかしくなり、事業が回らなくなったのです。

この失敗は、最初の時点で、契約書をしっかりと見ておけば防げたことでした。また、今思えばトラブルになった後も、法律を知っていればいろいろと対策できることもあったと感じます。この倒産は、法律がわからなくてダメになってしまった部分も多々あったので、今度は法律面でベンチャー企業を支える側になろうと思ったのが、弁護士を目指すきっかけです。

 

___経済学部から法律の世界への転身で、苦労したことはありますか?

ちょうど当時はロースクール制度が始まったばかりで、制度移行の過渡期でした。私は、学習院大学のロースクールに通ったのですが、その後、司法試験の合格までには4年ほどかかりましたね。最初、法律は全くわからない状態だったので、正直なところ、本当にしんどい思いをしました。

しかし、そのときの経験から、一般の人には法律用語はさっぱりわからないということが身にしみてわかっているので、専門用語を使わずにクライアントに説明するという今の基本姿勢は、あの時の経験がいきているかなと思います。

 

■会社経営の経験から身についたスピード感を弁護士業でも活かす

___仕事における信条、ポリシーについて教えてください。

よくクライアントに言われるのは「対応が早いですね」ということです。弁護士は、スピード感がない方も多いですからね。私は会社経営をしていたので、スピード感は非常に大事だなと、実感しています。IT企業のクライアントは特にスピードが重視されるので、法律相談だったら24時間以内に回答する、契約書のチェックだったら基本的には1日~2日くらいで回答するといったことは、心がけていますね。

今も法律事務所とは別に、会社も経営していますし、ITベンチャー企業の経営者だった経験があるので、単なる法律論で終わらせないようにしています。法律ではダメなのですよというのは、とても簡単なのですが、経営者は、それは求めていないだろうなと考えています。ダメということではなくて、それでは、どうしたらいいかという解決法や、代替案も必ず模索し提案するところまで、サポートするように心がけています。

 

___大学で経済学を学んでいたそうですが、今でも役立っていることはありますか?

私は、あまり大学に行っていないので(笑)そこは、なんとも言えません。ただ、学生ベンチャーをやっていたという経験によって、経営者の気持ちもすごくよくわかるというのはありますね。綺麗事だけでは、ビジネスは立たないということも、肌で感じています。

経営者にアドバイスするときは、自分が経営者だったら、どういうアドバイスを受けたいかなという視点でいつも回答していますね。経営者は「法律はこうなっています」といった通り一辺倒の回答は絶対聞きたくないと思います。また、レスポンスが遅いといったことも、絶対嫌なので、経営者の立場になって対応するように常に考えていますね。

 

 

*取材協力弁護士:中野秀俊(なかの ひでとし)弁護士
1984年生まれ。埼玉県出身。城北埼玉高校卒業。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。学習院大学法科大学院修了。大学在学中の2002年に、友人と共にベンチャー企業を設立。その事業の失敗を契機に、弁護士を目指す。グローウィル国際法律事務所 代表弁護士。みらいチャレンジ株式会社 代表取締。SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。東京弁護士会インターネット法部会会員。著書に「ここをチェック!ここをチェック! ネットビジネスで必ずモメる法律問題」「有利な契約・利用規約を結ぶためのビジネス契約書 つくり方とチェックポイント」(いずれも、日本実業出版社)などがある。

「グローウィル国際法律事務所」一問一答Q&A

___事務所の理念を教えてください。

法人のクライアントに関しては、企業の「攻め」と「守り」を支援しますということを理念としています。「攻め」の部分は、「みらいチャレンジ株式会社」のほうで、資金調達や人災採用とか、M&Aの仲介などを行っています。「守り」の部分は当事務所で、法律の部分を支援しています。

事務所名に「国際」という名称を入れているのは、国際的な案件にしても対応できるということを伝えたいからです。私は、シンガポールでも会社を持っているのですが、IT企業だけではなく、日本企業は、近年、東南アジアなどに進出しているケースが多いです。そうすると、契約書のレビューで英文契約書も見るといった対応も必要になってくる。知財の問題なども、海外の法律に関して精通しておく必要があります。

海外の弁護士とのネットワークもあるので、例えばタイで新しいサービスを展開したいという案件に対しては、タイの弁護士と一緒に法律の調査をして、マーケットの調査もするといった対応もしていますね。

___一番依頼が多い分野は何ですか?

IT企業のシステム開発の法律関係、著作権などの知的財産権関係、労務問題が多いですね。もちろん。他にも債権回収や、契約書のチェック対応などもあります。

___一番依頼が多い相談内容は何ですか?

2つあって、一つは例えば契約書など、ビジネスモデルの法的なチェックをしてくださいという予防面の相談です。もう一つは、紛争になりかけている事案に関する相談です。ビジネスチェックのときに、行政の相談窓口に一緒にいきましょうというケースもありますね。

___初回の相談料はいくらですか?

基本、法律相談は、1時間1万円をいただいています。相談料は法人も個人も一緒です。具体的に訴訟をしてくださいとか。交渉してくださいということになれば、ちゃんと事前に見積もりをして、よければ契約といった流れですね。

値段も顧問契約だったら、例えば5万円だったら、ここまでやりますという感じでホームページに明確に出していますので、あとから追加料金ということはないです。個人の案件も、旧弁護士会の基準が基本に算定しており、費用説明書を作り、なぜこの金額になるのかを分かりやすく説明しています。もちろん、追加料金はありません。

___着手金と報酬金の目安は?

訴訟になった場合は、いくら請求しているのか、または請求されているのかによって異なります。だいたいですけど、着手金が、請求する・された金額の5〜10%ぐらいのイメージです。

もちろん、これは金額によります。報酬金は、訴える側だったら実際に回収した額の10〜15%くらいの、訴えられた側は、減額した額の10~15%くらいのイメージですね。

 

 

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

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