テレビで事件の報道時に「責任能力があるから起訴する」あるいは「責任能力の有無が争点になる」といったフレーズを耳にしませんか?
この「責任能力」という言葉を聞いて、なんとなくは分かるけど、正確な定義までは分からない……という方が多いかと思います。
そこで今回は、責任能力とはどういったものなのか、どのような要素を基に責任能力の有無を決定するのかといった点について解説していきたいと思います。
■そもそも責任能力とは
そもそも犯罪が成立するためには、構成要件に該当し、その行為が違法で、かつ、有責でなければならない、という公式があります。
構成要件とは、例えば○○罪と規定されている条文の文言です。その文言に該当し、正当防衛などに該当しない違法な行為で、かつ、責任能力を持った状態、つまり、非難可能な人格の状態で行為を行わないと、犯罪にはならないのです。
この責任能力とは、刑法では、事物の是非・善悪を弁別し、かつ、それに従って行動する能力を言い、犯罪が成立するためには、この能力が要求されるのです。この能力を備えて、初めて非難可能となるのです。
責任能力は大きく分けて3段階あり、完全責任能力、限定責任能力(心神耗弱)、責任無能力(心神喪失、14歳未満の者)で区別されます。
完全責任能力が認められて、初めて満額の刑を科すことができることになっています。限定責任能力の場合は、刑法上、必要的に減刑されることになっています(死刑の場合は無期懲役、無期の場合は7年、有期の場合は長期及び短期の2分の1)。
■責任能力という概念がないとどうなるか
非難可能性すらない人に対して、刑罰を科すことになります。もちろん、心神喪失などの場合も、14歳未満の者に対しても、刑罰が科せられることになります。
精神的に支障をきたした人には、刑罰を科しても意味がなく、むしろ入院して病気を治してもらった方がいいということですね。未成年についても、児童相談所や少年院で矯正してもらった方がいいということになります。
■どういった要素を基に責任能力の有無は決定されるのか
継続的な精神の病変、すなわち、精神病、精神薄弱などだったり、一時的な精神状態の異常、すなわち、酩酊、催眠状態などだったり、様々な要素をもとに決定されます。
裁判などでは、精神鑑定が行われ、それに基づいて責任能力の有無が決定されています。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所代表。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする)
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