87歳が運転する軽トラが児童を死傷…増加する認知症高齢者の事故が抱える法的問題とは

10月28日に横浜市で、87歳の男性が運転する軽トラックが集団登校する児童の列に突っ込み、小学生ら7人の死傷者を出しました。この運転者には認知症の疑いがあり、現在も検査が進められています。なお、容疑者運転者の男性は2013年の免許更新時に認知機能検査を受けたが異常なし。それから3年、次の更新と検査を来月に控えての惨劇でした。

近年、交通事故の総件数は減少する一方で、65歳以上の高齢ドライバーが加害者になる割合は増加しています。警察庁によると、2014年に起きた交通事故のうち、65歳以上によるものは全体の18.7%、実に5件に1件を占めています。また、2015年6月に道交法が改正され、75歳以上の認知症対策が強化されましたが、今回の事件のようなケースは今後も増えることが予想されます。

そこで、このような事故に巻き込まれてしまった場合、被害者としては法的にどのような対応策を取るべきでしょうか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■交通事故の法的な責任とは

高齢者に限らず、交通事故の加害者となった場合、不法行為責任として、被害者に対し、損害賠償をしなければなりません。民事上の賠償責任だけでなく、自動車運転過失致死傷罪として、刑事責任にも問われます。

もっとも、高齢者のうち、認知症の疑いがある運転者による事故の場合、責任を負う前提としての責任能力が否定されるケースが稀にあり、今回の事故のように問題となります。

 

■加害者の責任能力の有無が問題に

法律上、刑事でも民事でも、加害者の責任が認められるためには、責任能力が備わっていることが条件となります。

民事上の損害賠償の事案では、重い認知症に罹患している場合、本人に事の善悪を判断する能力がないとして責任能力が否定されるケースが珍しくありません。当然、事故を起こした本人に責任能力が認められない場合でも、加害者本人の賠償責任は発生しません。

この場合、民法では、責任能力が否定された加害者に監督義務者がいる場合には、監督義務者が相当の注意を尽くしたといえる場合でない限り、監督義務者が本人に代わって賠償責任を負うことになります。

近年、認知症の高齢者がJRの線路に飛び込んで死亡した事件などで、介護に疲弊していた親族の監督義務者としての賠償責任を否定する判決も出され注目されました。

 

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき 弁護士

星野法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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