殺人の動機が「人を殺してみたかった」・・・罪は重くなる?

名古屋大学の女子学生が知人女性を殺害したとして逮捕された事件で、女子学生が「殺人願望」を持っていた事が明らかになってきています。

取り調べでは「人を殺してみたかった」と供述し、ツイッターには「殺してみたい人は沢山いる」などの書き込みが残され、大量殺人を犯した犯罪者などについて多く語るなど、殺人への執着があったと見られています。

人を殺してしまった時、その動機によって罪の重さが変わります。今回のような「人を殺してみたかった」という動機による殺人は罪の重さにどう影響を与えるのでしょうか。解説していきます。

牢や犯罪

●量刑とは?

量刑とは、裁判所が、刑法の定める所定刑期の範囲内で、被告人に対する宣告刑を決める作業のことを言います。どのような事情を斟酌して量刑を行うのかについて、参考となるのが刑事訴訟法248条です。

すなわち、捜査段階の被疑者を起訴するかどうかは検察官が決めることになっていますが、検察官において有罪を立証できるだけの十分な証拠を確保していた場合でも、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」(同条)とされており、起訴された後に裁判所が行う量刑においても、このような「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」が斟酌されます。

 

●情状とは?

量刑の上で一般的に使用される「情状」というものには、犯罪そのものに関する事情(いわゆる「犯情」というもので、犯罪の動機・原因、犯罪の手段・態様、被害者との関係や被害者の数、被害の程度などを指します。)とそれ以外の情状(被告人の性格、生い立ちや人間関係、被害者の被害感情、被害回復の程度、被告人の反省の程度、今後の監督者の有無など)が含まれます。

 

●殺人罪では、動機の解明が重要

殺人罪や放火罪などの重罪においては、捜査上、動機の解明が非常に重要となってきます。

なぜなら、そのような重罪を犯すには、それだけの動機があるものと一般的に考えられますので、殺人罪で逮捕した被疑者が、その罪の重さとはバランスの取れない動機を説明している場合には、真犯人は別にいるのではないかとの疑いも出てきますし、殺人罪の法定刑は、「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」となっており、裁判所の量刑の幅は相当に広くなりますので、動機に酌量の余地があるか否かは量刑に大きく影響を与えるため、その解明は必要不可欠だからです。

 

●「人を殺してみたかった。」という動機で殺人罪を犯した場合の量刑

殺人罪には、怨恨による殺人、保険金殺人、家族の将来を悲観しての無理心中など、様々な動機によるものがあります。

殺人罪の中でも、裁判所が被告人に有利に斟酌してくれる動機には、例えば、長年にわたって妻の介護をしてきた夫が、老々介護に疲れ果て、将来を悲観して妻(被介護者)を殺害してしまったような場合がありますが、他方で、保険金殺人は、もっぱら保険金を手に入れるといった利己的な欲求に基づくものであって、酌量の余地が全くないため、量刑上は非常に不利に斟酌されることになります。

「人を殺してみたかった」という動機で殺人罪を犯した場合には、そのような自己の興味本位に他人の生命を奪ってよいものではありませんから、動機としては理不尽としか言いようがなく、老々介護の果ての殺人の場合と比べると、重い量刑となることは間違いないものと思われますが、他方で、掴みどころのない動機であることも否定できないため、保険金殺人と同じくらいに重い量刑となるのかどうかは、やや微妙ではないかという気がします。もちろん、弁護人としては、そのような動機は理解しがたいものとして、犯人の責任能力を争うことになるでしょうし、精神の未熟さを示す有利な情状として主張していくことは当然に考えられるところです。

 

*著者:弁護士 田沢 剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所。8年間の裁判官勤務を経たのち、弁護士へ転身。「司法のチカラを皆様のチカラに」をモットーに、身近に感じてもらえる事務所を目指している。)

田沢 剛 たざわたけし

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

横浜市港北区新横浜3-19-11-803号(加瀬ビル88)

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