近時、日本にはギャンブル依存症の疑いがある人は536万人といるいう調査が報告されたり、一方で、カジノを作ろうという動きがあったりと、ギャンブルの是非が問題になっています。
ギャンブルへの依存は、個人の問題にとどまらず、配偶者や家族を貧困に陥れる危険性もあるものです。そこで今回は、結婚した相手がギャンブルにはまっている場合、離婚することができるかについて考えていきたいと思います。
■結婚後にギャンブルにはまった場合は、裁判離婚できる可能性がある
例えば、結婚前はマージャンもパチンコも競馬もやらなかった夫が、結婚後突如ギャンブルにはまりだし、多額の借金を作ってしまったというケースで、妻は離婚することができるでしょうか。
もちろん、夫が協議離婚に応じてくれれば問題はありません。しかし、協議離婚に応じず、離婚調停も不成立になった場合、妻は裁判を起こして離婚をすることができるのでしょうか。
借金の額やギャンブルに依存していた期間にもよりますが、このようなケースでは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」という裁判離婚原因があるとして、離婚判決が下される可能性があるでしょう。
具体的には、借金の金額が数百万円に上り、給与の大半が借金の返済に回っていたり、妻や子の預貯金をかってに崩して返済に充てているようなケースが考えられます。
逆にギャンブルによる借金の額が数十万程度で、夫の給与などから返済しても夫婦や家族の生活に支障を与えない程度に収まっているのであれば、他の事情にもよりますが、裁判での離婚が難しくなると考えられます。
■結婚前のギャンブルの借金が発覚した場合でも裁判離婚できることがある
結婚前に夫がギャンブルで借金をしていたのに、それを隠して結婚したケースについても、借金の額によっては裁判離婚原因となりえます。
多額の借金があるケースでは、夫婦のその後の経済生活に多大な影響がありえます。住宅ローンや教育ローンを組めない危険性もあり、妻のその後の人生設計が全面的に狂う大きな問題です。このようなケースでは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるといえます。
ただ、数十万程度の借金を黙っていた程度であれば、そのこと自体で即離婚原因になるとは考えにくいでしょう。
実際に私も配偶者が遊興費で多額の借金を背負っていたケースの離婚事件を担当したことがありますが、このようなケースでは、妻や子が経済的にだけでなく精神的に追い詰められることも少なくないのが実情です。
ギャンブルへの依存は、共に暮らす家族を不幸に陥れるのです。
*著者:弁護士 寺林智栄
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