8月31日、群馬県大泉町の路上で職務質問を受けた際噛み付いたとして、公務執行妨害容疑で逮捕される寸前だったベトナム人男性が逃亡する事件が発生。
男性は警官に対し噛み付くなどして逃走。警察が行方を見失ったため、付近住民に不安が広がりました。結局、当該男性は1日午後11時20分頃、熊谷市のコンビニ駐車場にいたところを発見され、逮捕されました。
二次被害がなかったことは不幸中の幸いですが、一歩間違えれば大事件に発展する可能性も。大失態を演じた警察に住民などから、怒りの声があがっています。
なお、逮捕された男は警察の取り調べに対し逃走した理由について、「無免許運転やオーバーステイがバレると思ったため」と述べているそうです。
■逮捕時に「逃亡」した場合罪は重くなる?
今回のように逮捕時に「逃亡」した場合、素直に罪を認めて逮捕に応じるよりも罪を重くするべきであるように思えます。そのようなことは可能なのでしょうか。
星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。
「まず、刑法には逃走罪がありますが、現行犯逮捕されたただけの者が逃走した場合を処罰していませんので、逃走罪は成立しません。警察官に噛みつくなどしている点は、問題なく公務執行妨害となります。
その後の逃走状況に応じて、民家等他人が看守する建物、住居に隠れていた場合は、建造物侵入や住居侵入罪に問われる可能性があります。
オーバーステイという事情があれば、もちろん入管法違反の罪にもなります。
刑法の逃走罪というと、今回のようなケースに適用されると思われがちですが、逃走罪は”裁判の執行により拘禁された者”が逃走した場合に適用されるので、現行犯逮捕の犯人が逃走しても逃走罪には問われません。ただし、逮捕時に噛みつき逃走したことは公務執行妨害罪や入管法違反で起訴されたときに情状面で考慮されます」(星野弁護士)
どうやら逮捕時に逃げたというだけでは、罪は成立しないようです。
■警察官の責任は?
今回のような失態を演じた警察官に刑事責任などは発生しないのでしょうか? こちらも同じく星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士に聞いてみると……。
「仮に注意散漫があったとしても、そのことをもって刑事責任に問われることはありません。
今回の事案では噛みつくなど抵抗されているので過失があるとは思えませんが、仮に重い過失があった場合であっても、職務上の懲戒処分となるだけであり、刑事上の責任が発生することはないでしょう」(星野弁護士)
やはり刑事責任等は発生することはないのですね。
もちろん犯人の取り逃がしは、刑事的な責任はなくとも、職務上の処分となる可能性はあると思われます。また、「現行犯逮捕時に逃げる」という行為も、罪にはならなくともやって良い行為ではありません。
*取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*Africa Studio / Shutterstock
【関連記事】
* 「誰にも相談できない…」美人局被害に遭ったらどうすればいい?