相次ぐ残業代の未払い…具体的にはどう取り戻せばいいの?

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今年に入り、大手運送会社やスーパーマーケットチェーン店、さらにはレコード会社などで、未払い残業代の存在が発覚しています。

いずれのケースも深夜まで長時間労働者を勤務させたにもかかわらず残業代を支払わない「サービス残業」を社員に強要したもので、非常に悪質。

許せない行為ですが、このような会社は、ほかにも山のように存在しているといわれています。

 

■中小企業は「自ら取り戻す」しかない?

大企業は今後未払い残業代を速やかに支払うと宣言しているため、労働者は無事手にするべき金銭を受けとるものと思われますが、中小企業などではそうはいきません。

いわゆるブラックな経営者が、自らのことだけを考え、その労働力を搾取し続けるケースがほとんどです。

その場合は、退職後に「自分で取り戻す」選択をせねばなりません。口で言うのは簡単ですが、様々な手続きの必要もあり、嫌になってしまうことも多いはず。

そこで実際に未払い残業代を請求するにはなにが必要で、費用はいかほどなのか。そして本当に取り戻すことができるのか、法律事務所あすかの冨本和男弁護士に解説していただきました。

 

■必要なものは?

Q.サービス残業代を請求するうえで必要になるものは何がありますか?

「・雇用契約書…雇用されている事実・雇用契約の内容(賃金の額、締日、支給日等)を証明するために必要となります。

・就業規則・賃金規程の写し…賃金計算の締日、賃金の支給日、所定労働時間等を証明するために必要となります。

・給与明細…賃金の額、残業代が支払われているかどうか等を証明するために必要となります。

・タイムカードの写し・パソコンのログ等労働時間を証明するための証拠

こうした証拠について退職を切り出す前に入手しておけばスムーズに請求することもできます」(冨本弁護士)

 

■費用はいくら?

Q.費用はいくらぐらいかかりますか?

「弁護士費用と実費が必要です。弁護士費用の額は依頼する弁護士との間の話し合いで決まりますが、請求する金額や事件の難易度によって決まるのが通常です。

弁護士費用についても、法律相談料・着手金・報酬金と分ける先生が多いです。

法律相談料は、文字通り法律相談の料金です。「30分5,000円」が相場です。法律相談を経て、相談者の方は弁護士に依頼するかどうか、弁護士の方は引き受けるかどうか決めるわけです。

着手金はファイトマネーで事件を依頼するときに支払う弁護士費用です。「300万円以下」の請求であれば「8%以下」が相場です。報酬金は、事件の成果に応じて支払う弁護士費用で「300万円以下」の請求であれば「16%以下」が相場です。

実費としては、請求書を内容証明郵便で送る場合の郵便料金(1通2,000円位)、裁判を起こす場合の印紙代・切手代(数万円位)、交通費等が考えられます」(冨本弁護士)

 

■本当に取り戻すことができる?

Q.本当に残業代を取り戻すことができますか?

「賃金の請求権は消滅時効期間が“2年”です。勤務先が消滅時効を援用すると、その範囲の請求は認められなくなります。

時効にかかっていない分については、労働審判や裁判をすれば認められます。裁判で判決をもらう場合、勤務先に対して付加金の支払いを命じてもらえる場合もあります。

付加金というのは、勤務先が労働基準法上の解雇予告手当・休業手当・割増賃金等を支払わなかった場合に、労働者からの請求によって裁判所がこれらの未払い金に加えて支払いを命じることができる未払い金と同額の金銭のことを言います。労働基準法違反のペナルティです」(冨本弁護士)

 

しっかりとした手続きをしたうえで、弁護士に相談すれば、未払い残業代を取り戻すことは可能であることが冨本弁護士の解説でお分かりいただけたかと思います。

もし「未払い残業代を取り戻したい」と考えている人は、弁護士に相談をしてみましょう。適切なアドバイスをくれるはずです。

 

*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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