東京都立川市でカーブミラーを叩き割った男性が、逮捕されるという出来事がありました。
同市では2月以降カーブミラーを割られる被害が40件以上確認できており、関与していないか調査しているとのことです。
ところで、このカーブミラーを叩き割るというこの行為はどのような罪に当たるのでしょうか? 交通事故にも繋がりかねない行為ですが、解説してみたいと思います。
■カーブミラーを破壊することはどのような罪になるのか
カーブミラーを破壊した場合に成立する可能性のある犯罪としては、刑法261条の器物損壊罪や同法124条の往来妨害罪が考えられます。
もっとも、このうち往来妨害罪は、「陸路」、つまり道路そのものを損壊したといえる場合に成立する犯罪です。
しかし、カーブミラーは道路そのものではなく、道路の付属設備に過ぎないと考えられることから、結論としては、カーブミラーを破壊しても往来妨害罪には該当せず、器物損壊罪が成立するのみということになるでしょう。
器物損壊罪が成立する場合、犯人は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性があります。
なお、刑法上の器物損壊罪が成立するのは、あくまでもカーブミラーを「故意に」損壊した場合に限られます。
したがって、例えば交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合のように、故意ではなく「過失で」損壊してしまったに過ぎない場合には、器物損壊罪は成立しません。
ただし、たとえ過失であっても民法上の不法行為は成立しますので、交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合でも、カーブミラーの所有者に対する損害賠償責任は免れません。
■壊されたカーブミラーが原因で交通事故が起きたら…?
また、壊されたカーブミラーが原因で交通事故が発生したといえるのであれば、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負う可能性はあるでしょう。
しかし、通常は、犯人が事故当事者に対してまで責任を負うことは少ないのではないかと思います。
なぜなら、カーブミラーが壊されていた結果、道路の見通しが悪かった場合でも、運転者はそのような道路状況を前提に前方に注意して運転すべきであり、仮に事故が発生した場合も、事故発生の直接の原因は、運転者の前方不注視であると判断されることの方が多いと考えられるからです。
他方で、確かにカーブミラーが壊されていたことも、事故発生の一因ではあるでしょうが、それはあくまでも間接的な原因に過ぎず、法律上の因果関係まで認められることは少ないだろうと思います。
ただし、例えば犯人がカーブミラーを破壊した際、現に車両がカーブに差し掛かっており、運転者もカーブミラーを見ながら運転していたにも関わらず、突然カーブミラーが破壊された結果、交通事故が発生してしまったというような特殊な事情がある場合には、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負うことは十分考えられます。
*著者:弁護士 髙田 英治(髙田総合法律事務所。企業法務をメインとしつつ、相続・離婚・交通事故等の個人に関わる法律問題も幅広く取り扱う)
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