YouTubeへのカラオケ投稿って本当に法的上はアウトなの?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

自分がカラオケで歌う様子を動画投稿サイト『YouTube』で投稿した男性に対して、東京地裁が、カラオケ機器メーカーの著作隣接権を侵害するとして公開禁止を命じる判決を言い渡したという報道がありました。

しかし、YouTubeは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者と包括契約をしており、これらの管理楽曲をYouTubeで使用することは可能なはずです。

なぜ、今回、公開禁止を命じる判決が言い渡されたのでしょうか? また、「著作権」とは異なる「著作隣接権」とは何でしょうか?

アクシアム法律事務所の高木啓成弁護士にお伺いしました。

 

■1.著作隣接権とは?

作詞・作曲をした人は、「著作者」として、「著作権」が発生し、この「著作権」は、音楽ビジネスでは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者が管理しています。

そして、これらの著作権管理事業者は、様々な楽曲の利用者(レコード会社、放送局、コンサートホール、YouTubeなどの動画投稿サービス)に対して、楽曲の使用を許諾する代わりに著作権使用料を徴収しています。

YouTubeは、これらの著作権管理事業者と包括契約して著作権使用料を支払っているので、利用者は、楽曲をカバーしてYouTubeに投稿することができるわけです。

他方、作詞家・作曲家ではなく、その楽曲を歌った歌手やバックミュージシャン、多額のレコーディング費用をかけて楽曲の音源を制作したレコード会社には、「著作権」は発生しません。

しかし、これでは、たとえば、その楽曲CDの海賊版が出回ったとき、歌手やレコード会社は差止請求や損害賠償請求ができない、ということになってしまいます。

これでは不都合なので、歌手やレコード会社(正確にいうと、「レコード製作者」)にも、著作権に似た「著作隣接権」という権利が与えられており、海賊版などに対して法的請求ができるようになっています。

そして、重要なところですが、YouTubeなどの動画投稿サービスは、「著作権」はクリアしているものの、一部を除き「著作隣接権」はクリアしていません。

ですので、たとえばCDの音源をアップロードすることは、そのCD音源の「レコード製作者」の「著作隣接権」の侵害になってしまうのです。

 

■2.今回の判決

今回の判決を読むと、「自分がカラオケで歌う様子をYouTubeで投稿した男性は、カラオケ機器メーカーの“レコード製作者”としての“著作隣接権”を侵害している」という判断がなされています。

ただ、ひとつ疑問が生じます。

「レコード製作者」の権利は、音楽をマスターテープなどに固定(録音)することにより発生します。CDの音源のように、レコーディングを行ってマスターテープに固定(録音)することが典型例です。

逆にいうと、音楽を何かに固定(録音)しなければ「レコード製作者」の権利は発生しないはずです。

しかし、通信カラオケの音楽は、一部の楽曲を除き、カラオケ店での利用者のリクエストに応じて、専用サーバーから、その楽曲のmidiデータ(譜面やテンポ、音の種類などの情報)が配信され、店内のカラオケ機器が受信し、その都度、その機器付属のシンセサイザーで再生する方法で演奏されているはずです。

カラオケ機器や専用サーバーに、カラオケ楽曲の全ての音源が保存されているわけではありません。だから、利用者が、曲のキーやテンポを自由に変更できるわけです。

そうすると、それぞれのカラオケ曲については、音楽の「固定」という過程が存在しないように思います。

それぞれのカラオケ曲にレコード製作者の著作隣接権が発生するのか、またはカラオケ機器のシンセサイザー音源自体に著作隣接権が発生するのか、検討の余地があるように思います。

ただ、今回、被告側がこの部分を詳細に争わなかったので、原告であるカラオケ機器メーカーの主張が全面的に認められたのだと考えられます。

 

*取材協力弁護士:高木啓成(アクシアム法律事務所。エンターテイメント法務、離婚や不貞行為などの男女関係の法律問題、交通事故(被害者側)、労働問題(会社側、従業員側どちらも対応)を取り扱う。)

*取材・文:編集部

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