企業では社員の健康を守るため、1年に1度健康診断を受けるよう指導します。
これは労働安全衛生法66条の1に
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
という規定があるためで、経営者が労働者に健康診断を受けさせることは「義務」となっています。
しかし、受ける側としてはバリウムを飲むことや採血など苦痛なことも多く、敬遠したくなるもの。何年も受けていないという人も、いるかもしれません。
そんな「健康診断を受けない社員」について、ある企業が「罰則規定」を設けたそうです。健康管理を促すためとされていますが、少々納得がいかないのも事実。このような健康診断の強制に違法性はないのでしょうか?
ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。
Q.健康診断を受けない社員に罰則……これは違法ではありませんか?
A.合法です
「労働安全衛生法66条5項には
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
と規定されており、労働者の義務と規定されています。判例でも、懲戒処分(減給等)が認められていますね。(名古屋高判平9.7.25等)」(森川弁護士)
バリウムや胃カメラ、採血など嫌なことばかりの健康診断ですが、そこから重大な病気を早期に発見できることもあります。
罰則規定を設けて受診を促すやり方については賛否両論ありますが、「受けることは社員の義務」であることは認識しておかねばなりませんね。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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