1月31日に放映されたあるテレビ番組が、ホームレスの男性を「化け物」と表現していたり、やらせを頼むことでホームレスの方々への偏見を助長しかねない内容になっていると指摘がされ、これが話題になっています。
この番組が放映された直後、ホームレスの方々が居住するテントに向け、投石がされたり、野火が相次いでいるようであり、一部の方々は実害も被っているようですが、このような番組を放映することに問題はないのか、解説していきたいと思います。
■法的に問題にすることは難しい
あるホームレスの男性を「化け物」などと表現することは、一般的に言ってその男性の名誉や名誉感情を侵害するものと言い得ます。そのため、本人がこのような表現をされることを承諾していたという事情がないのであれば、これらについての責任を追及することは可能でしょう。
しかし、男性は「やらせ」に協力していたという情報もあるところであり、その前提があるとすると、「化け物」といった表現をされることを承諾していたとみる余地もあります。
そのため、責任追及をするとしても、そう簡単ではないかなという印象があります。
また、この放送により実害を被っている人もいるということですが、あくまで放送はきっかけであり投石や火を付けるなどの行動を煽っているわけでもないと思われます。
そのため、番組をきっかけに行動する者がいるとしても、それを理由に番組・テレビ局の法的責任を追及するということは困難でしょう。
■倫理的な問題は別途ある
もっとも、法的責任の追及が難しいとしても、倫理的な問題は別途あります。倫理的な問題の自主規制のために、放送倫理・番組向上機構(BPO)が存在しています。
やらせの問題やヘイト感情を煽るような内容は、BPOで問題とされる可能性があります。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
【画像】イメージです
*ThefotosoloNo1 / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*電話番号が全国に放送されて「イタ電」が殺到 テレビ局に責任はある?
*ASKAのタクシー乗車中映像、流出元が謝罪…ドラレコの映像提供は法的にどこまでOK?