職種・業種によっては様々な資格が存在するため、キャリアアップの手段として資格取得を目指している方は多いのではないでしょうか。
ただ、自発的に資格取得を目指すのであればいいのですが、会社が資格取得を強制し、なおかつ取得にかかる教材費や受験料などを全く支払ってくれないケースがあるようです。法的に問題はないのでしょうか?
Q.業務命令なのに自腹で資格取得……そんなのアリ?
A.必ずしも違法にはなりませんが、業務命令ならば、会社の経費とするのが当然と言えるでしょう。
資格取得が業務命令なのであれば、それに伴い発生する費用は本来なら「経費」として処理するのが妥当であると言えるでしょう。
ただ、業務上必要な費用を従業員に負担されることが「違法」であるという法律は明確に存在していないため、就業規則などに「資格取得は自費で行う」などの定めがあれば、従業員としては一応それに従う義務があると言えます(個人的にはそんな定めをしている会社はどうかと思いますが……)。
ただし、つい先日「自己啓発の学習も労働時間として取り扱うべき」との指針が厚労省から出されているため、今後資格取得のために要した学習時間などは「労働時間」として賃金を請求できる可能性は非常に高まっていると言えます。
ちなみに、会社によっては一定の資格取得が昇級や昇格の「条件」となっているところもあるようですが、これは会社の人事権の範疇と言えるため、特に違法性はありません。
資格取得などの「自己啓発の学習」が労働時間と認定されるようになるのかは今後の行政の動向にも注目したいところですが、資格取得は自分自身のキャリアアップに繋がることは間違いありませんから、取得することは是非積極的に行っていただきたいと筆者は考えます。
(もちろん、それに要した時間が「労働時間」として見なされるようになるのが一番望ましい形でしょうが……)
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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