11月14日に東京大学が、来年春から入学する女子学生を対象に、月3万円、最大2年間の家賃補助制度を導入すると発表しました。狙いとしては、全体の2割しかいない女子学生を増やす目的だそうですが、女子学生だけを優遇するこの制度は不公平ではないかと、ネットを中心に物議をかもしています。
これは不平等(性差別)に当たらないのでしょうか?
■性別による差別を禁止している法的根拠とは?
日本の憲法では第14条1項において、「すべて国民は、法の下に平等であって…性別…により…差別されない。」と定められています。
ただ、一切の差別を許されないのかと言われるとそうではなく、社会通念上合理的と判断される差別は許されることになっています。形式的に平等ということを貫くと、かえって不平等になってしまうことがあるからです
■東大の「女子学生を対象とした家賃補助」は不平等(性差別)に当たるのか?
本件の東京大学の目的は、学生の男女比率が8:2と女子学生が非常に少ないことから、女子学生を優遇しようということだ、と一部報道で報じられています。
東京大学は国立大学の雄であり、日本全国から優秀な学生を集めて、日本の将来のために貢献してもらおうという目的があります。これは社会における男女格差がなくなってきた現在において、女性にも日本を支えてもらえるような人材になってい欲しいという目的でもあり、目的自体は正当なものだと考えます。
では、その目的を達成する手段として、女子学生を対象に家賃補助をすること自体、社会通念上合理的と言えるでしょうか。
女子学生が東大に集まらない原因の一つとして、地方から出てくる女子学生が東京で一人暮らしをすることに対する、親御さんの心配、さらには費用の負担の問題があるかと思います。
しかしながら家賃補助だけでは、女子学生が東京で一人暮らしをすることに対して、親御さんの心配は払拭されないのではないでしょうか。さらには家賃補助の金額について、親御さんの収入条件を加味しないことなどから考えますと、社会通念上合理的と言えるかどうかは甚だ疑問と言わざるをえません。東大で女子専門の学生寮を作って、そこを格安で貸し出す等くらいにしないと、国民のコンセンサスは得られないのではないでしょうか。
したがって、社会通念上合理的というには疑問が多く、憲法14条1項に違反する可能性が高いものと思います。
■私立大学と国公立大学による違い
一方、私立大学であれば、全く問題ないでしょう。私立大学も巨大組織なので、国家権力ではなくとも、憲法の趣旨を勘案しながら行動しなければなりませんが、家賃補助の程度であれば、一企業の政策として文句を言う方はいないでしょう。
東大では女性教員の少なさも課題になっているそうですが、真に日本を支える女性の人材を輩出できるようになってもらうべく、根本的な問題解決に向けて改善していってもらいたいものです。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
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*まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
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