「他人のIDを不正入手」「ヤフオクで架空出品」…巧妙なネット詐欺の法的問題点は?

11月16日、フィッシングサイト(本物そっくりの偽サイト)から不正に入手した他人のIDやパスワードを使用して、ネットオークションで架空出品を繰り返していたとして、別の罪で公判中だった男性2人が再逮捕されるという事件が報道されました。

実際に私たちが被害に遭う可能性もあるこの犯罪。一体、どのような行為が問題とされたのか見てみましょう。

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■「フィッシングサイトの開設」は何罪に?

この事件では、約2年間、ヤフーのポータルサイト「ヤフージャパン」を偽装したフィッシングサイトを開設していたようです。フィッシングサイトとは、本物のサイトに極めて似ている偽サイトを作成して、「釣り」をするように他人のIDやパスワード、暗証番号などを抜き取るためのサイトです。

そして、偽サイトを本物のサイトであると誤解してアクセスしてきた人が、IDやパスワードといったログイン情報を入力することで、これらの情報を取得していたようです。

フィッシングサイトは、サイト管理者になりすましたり、サイト管理者であると誤認させて、IDやパスワードの入力を求めるサイトであり、「不正アクセス禁止法7条」が禁止しています。これに抵触する場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(同法12条)。

 

■「チケットの架空販売」は何罪に?

この者らは、さらに不正に取得したIDなどを使って他人になりすまし、「ヤフーオークション」(ヤフオク)で、コンサートチケットを出品し、落札した者から代金を受け取りながら、チケットの送付をしないということを繰り返していたようです。

まず、不正に取得したIDなどでヤフオクを利用していたということなので、これは他人のIDやパスワードで不正アクセス行為をしていたということです。不正アクセス行為は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています(不正アクセス禁止法11条)。

次に、チケットを出品して代金を受け取りながら、チケットの発送をしていません。そもそも他人のIDでログインをしている時点で架空の出品であることが強く推認され、当初から代金を受け取ってもチケットの発送をするつもりはなかったであろうと思われます。他方で、購入者はチケットを取得できると信じて購入しているでしょう。

したがって、このような行為は詐欺行為であるといえます(刑法246条1項)。なお、「詐欺罪」は、10年以下の懲役とされています。

 

■「民事上の責任」も発生する

犯人については上記のような罪が成立する可能性がありますが、それ以外に別途民事上の責任が発生します。

民事上の責任というのは、簡単にいえば「損害賠償責任」ということであり、不正アクセスをされた被害者への賠償、詐欺被害者への賠償責任が発生します。

 

スマホでのネット閲覧が当たり前になった今、このような被害に遭う危険性は日々高まっています。少しでも怪しいなと感じたら、絶対にアクセスしないことが一番の対処法です。

 

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

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*PIXTOKYO / PIXTA(ピクスタ)

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清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

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