ホテルのキャンセル料に法的基準はある? 重加算されることは? 弁護士が徹底解説

先日、ホテルの予約サイトを使って無断キャンセルを1年間で約3200回繰り返し、ポイントを不正取得するとともに、宿泊施設に損害を与えていた親子が逮捕されました。

その巧妙かつ悪質な手口に、怒りの声が相次いでいます。

 

キャンセル料に法的基準は?

今回問題となったホテルのキャンセル料。前日は料金の50%、当日の不泊は100%を支払うような設定が一般的ですが、なかには当日の16時までに連絡すれば不要というホテルもあり、企業によって規定が異なっているようです。

ホテル側としては、予約をキャンセルされることによって被る損害を抑えるため、やむを得ない措置だと思われます。利用者としては、親子のような不正キャンセルはもってのほかですが、当日の急な用事や公共交通機関の運行停止などでキャンセルせざるを得なくなった場合は、支払いたくないものでしょう。

各ホテルに設定されているキャンセル料ですが、法律によって明確な規定があるのでしょうか? 法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。

冨本弁護士:「ホテルのキャンセル料の請求について、法律に根拠規定はありません。ホテルは,ホテルと宿泊客との間の契約にキャンセル料の規定がある場合、その契約に基づいて請求できるだけです」

法的な根拠規定はないんですね…。

 

適正価格はある?

根拠がないと聞くと、ホテルが法外なキャンセル料を請求できるようにも思えてしまいます。適正価格などは、あるのでしょうか。仮にありえないような金額を請求された場合、どうなるのかも気になります。 法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみると…。

冨本弁護士:「キャンセルによりホテルに生じる平均的な損害額を超えるようなキャンセル料を定めている契約の場合、消費者契約法9条1号に違反して無効となります。消費者契約法は、消費者の利益を守るための法律です。

例えば、宿泊予定日まで間があるタイミングでのキャンセルであるにもかかわらず、宿泊料の80%に相当するようなキャンセル料を定めているような場合、平均的な損害額を超えるのではと思われ、消費者から消費者契約法違反を理由に無効と言われる可能性があります」

 

重加算することは可能?

適正と思われるキャンセル料の場合、予約者に支払い義務が発生するようです。逮捕された親子のように「踏み倒す」人間もなかにはいることでしょう。そんな場合、ホテル側としてはキャンセル料に延滞金などの名目で重加算したくなります。可能なのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士の見解は…。

冨本弁護士:「あまりにも重い加算の場合、結局ホテルに生じる平均的な損害額を超える請求になってくると思いますので,消費者契約法に違反する可能性があります」

 

事前にしっかりチェックを

ホテルのキャンセル料は明確な法的基準がなく、あくまでも「契約」に基づいたもの。見落としてしまいがちですが、ホテルを選ぶ際にしっかりキャンセル料について定められた条文を、しっかりチェックしておくことが、不要な争いを避ける方法かもしれませんね。

 

*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

東京都千代田区霞が関3‐3‐1 尚友会館4階

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