新潟県で発生した女子小学生殺害事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。犯人が捕まり、近隣住民には安堵が広がっていますが、残忍な手口と犯行に、怒りの声は収まっていません。
そんな怒りの陰で疑問視されたのが、メディアの取材方法。警察が捜査を行っている際、現地を訪れたマスコミが深夜に近隣住民宅のインターフォンを鳴らし話を聞く、了解なしにマイクを向けるなどしたとして、住民から苦情が寄せられました。
事態を受けた新潟市は、市長が限定的な取材を行うよう申し入れましたが、受け入れられたか否かについては、微妙なところでした。
■メディアの過剰取材が問題化
メディアの過剰取材は社会問題化しています。日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題でも、監督やコーチへのしつこい取材や、関係のない家族へのインタビュー、さらには関係ない学生にマイクを向けるなど、やりたい放題の印象です。
このようなメディアによる乱暴とも思える取材手法は、違法にならないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。
■あまりにもひどい場合は損害賠償請求も可能
冨本弁護士:「あまりにも酷い場合侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超えますので、不法行為(民法90条)であるとしてメディアに対し損害賠償を求めることができると考えます。
メディアの報道は、国民の「知る権利」に奉仕し、メディアの取材の自由も表現の自由を保障した憲法21条の精神から十分尊重に値すると考えられてはいます(博多駅事件最高裁決定)。
しかし、こうした十分尊重に値する取材も、他人の私生活の平穏・名誉・プライバシー等を侵害すれば違法になり得ます。」
やはりあまりにも酷い場合は、損害賠償を請求することができるようです。
■失礼な取材を受けた場合どうしたらいい?
自分が取材対象になってしまう可能性は、誰もが持っています。仮にメディアから失礼な取材を受けた場合、どのようにして被害を訴えていけばよいのでしょうか?
冨本弁護士:「メディア対一般人(私人間)の問題ですが、こうした私人間でも、一方の社会的に許容しうる限度を超える侵害に対しては、不法行為等の規定によって保護を図るという方法があります(三菱樹脂事件最高裁判決)。
連日被害を受けているような場合、いつ誰からどういった被害を受けたかについて日記にまとめ、録音・録画することによって証拠にしておき、弁護士に相談されるとよいでしょう。」
国民の知る権利に奉仕する存在とされるマスメディアですが、過剰な取材は違法になりえます。仮にそのような行為にあってしまった場合は、証拠を残した上で然るべき機関や弁護士に相談してみましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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