【法定刑は死刑のみ】外患誘致罪とは何なのか弁護士が解説

日本で最も重い犯罪といわれているのが、外患誘致罪。その法定刑は、「死刑のみ」と聞きますが、実際のところよくわからない、という人がほとんどではないでしょうか?

外患誘致罪に該当する行為や、その法定刑、そして歴史上判例があったのかなど、詳細をあすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士に、解説して頂きました。

 

■外患誘致罪とは?

高野倉弁護士:「外患誘致の罪は、外国と合意して日本を攻撃させる行為を処罰するものです。日本国外から日本国の存立を危うくする行為を処罰する『外患に関する罪』の一種です。

外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。(刑法81条)

とされています。

ここでいう『外国』は日本が承認していない国でもよいとされていますが、領土・国民といった国家としての実質を備えている必要があります。テロ組織は『国家』にはあたりません。

単に外国に『日本を攻めて欲しい』と伝えても外患誘致罪は成立しません。外国との間で、日本に攻め込む決意をすることに積極的な影響を与えるような合意(通謀)をすることが必要です。

そして、外国が日本に武力行使をして初めて、外患誘致罪が成立します。ここにいう武力行使とは国際法上の『敵対行為』をいうとされています。例えば、外国の軍隊が日本の領土に不法侵入した場合や日本の領土を爆撃した場合に敵対行為があったといえます。

日本に攻め込む合意が成立しても、実際に外国が攻め込まなかった場合には、外患誘致罪の未遂となります(刑法87条)。

また、外国との間で合意をするための準備として謀議をしたり計画を立てたりした場合、外患誘致罪の予備または、陰謀として処罰されます(刑法88条)。

この謀議・計画も、単に『攻め込んでもらおう』、『日本なんて外国に滅ぼされればいい』と仲間内で話をしていたというだけでは処罰されません。処罰に値する程度の危険性(具体性)をもった謀議・計画である必要があります。」

 

■法定刑は死刑のみ

高野倉弁護士:「外患誘致罪の法定刑は死刑のみです。日本において法定刑が『死刑のみ』とされているのは外患誘致罪だけ。国家の存立に重大な脅威を与える罪であることから死刑のみという異例の法定刑とされています。もっとも、酌量減軽(刑法66条)によって無期懲役や有期懲役に刑が減軽される可能性はあります。」

 

■裁判例はない

高野倉弁護士:「現在、外患誘致罪の裁判例はありません。明治時代に制定された旧刑法の時代から外患誘致罪は存在しますが、外患誘致罪で起訴された事件はありません。

外患誘致罪の適用が検討された事例にゾルゲ事件というものがあります。ソビエト連邦のスパイとされたリヒャルト・ゾルゲについて、外患に関する罪の一種である間諜罪(刑法85条、現在は削除)の適用が検討されたようですが、見送られたようです。条文上、『敵国』に情報を流す行為が、処罰の対象になっていた日ソ不可侵条約を締結していたソビエト連邦は『敵国』ではないとして適用が見送られたとされています。

いずれにせよ、外患誘致罪で裁判になった事件はありません。日本に攻め込むことについて外国との合意をしなければならないことから、外患誘致罪が成立することはまれと思われます。予備・陰謀であっても成立のハードルは極めて高いといえます。」

 

高野倉弁護士によると、外患誘致罪は日本に居住している人間が外国に対し積極的に『攻め込む』よう影響を与える行為とのこと。

このような行動は日本に住むすべての国民に生命の危機を与え、同時に国家存亡にも影響を及ぼすことになりますので、『死刑』という極めて重い罪となるのも、致し方ないように思えます。

実際のところ外患誘致罪になったケースはないようですが、今後このような人物が出ないとも限りません。外患誘致罪は『抑止力』として存在している法律なのかもしれませんね。

 

*取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

*画像はイメージです(pixta)

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