3月末から4月の社会人は、歓送迎会など、飲み会に出かける機会が増えるもの。当事者にとっては嬉しいかもしれませんが、自分の時間を取られるだけに、『行きたくない』と考えている人も多いのでは。
とくに上司が酒飲みで『連れ回し好き』だと大変。夜遅くまで付き合いを強要されることもしばしば…。翌日が休みならいいのですが、仕事があればさらに困りもの。出社の時間を考慮してくれることなんてほとんどありませんよね。となれば通常通り出勤しなければいけません。
もしこういったことで遅刻や欠勤が続けば、会社から減給や解雇などの処分を受けることも考えられます。そのような場合、会社に上司の行為や受けた処分について不当性を訴えることができないのでしょうか?
法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。
■不当性を訴えることはできる?
「不当性を訴えることができるのではと思います。
まず、上司に連れ回された点について。これが断ることができないものであれば業務に当たる可能性がありますし、業務に当たるのであれば残業代を請求できます。
次に、上司に連れ回されたことが原因で体調不良となって休んだのに対し、会社から減給などの処分を受けた場合。懲戒権の濫用として不当性を訴えることができるのではと考えます。
懲戒処分は、職場の秩序を守るための制裁です。対象となる労働者の行為の性質・態様・その他の事情に照らして、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利の濫用として無効になります。
上司に連れ回されたことが原因で体調不良となって休まざるを得なくなっているわけですから、部下に責任はありません。そうした事情の下で懲戒処分を課すことは客観的に合理的理由があるとは言えず減給などの処分を課すことが権利の濫用に当たると考えられます」(冨本弁護士)
■困っている場合どうすればいい?
仮に夜上司に連れ回され困っている場合、どのような 対応をとればよいのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみると…
「労働者の対応ですが、そもそも上司に連れ回されることが元になっているわけですので、労働者としては上司に対し業務命令かどうか確認し、業務でなければ断るといった対応が考えられます。」(冨本弁護士)
相手が上司の場合、なかなか直接「やめてください」とは言いにくいもの。しかし、業務に影響が出るような夜の飲み会は生産性の低下や勤務状況の悪化など、自身の評価を下げることになりかねません。
もし上司の連れ回しに困っている場合は、弁護士に相談してみましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)