バイキングに行ったら料理がほとんどない…返金は可能?

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ホテルでは「朝食プラン」と題して、宿泊費に食事代込みの値段が含まれている場合があります。提供される料理は様々で、「1つの楽しみ」と考えている人も多いことでしょう。

朝食形式の1つが、バイキング。ビジネスホテルなどで取り入れられている方式で、様々な料理の中から好きなものを選び食べるというスタイルです。

 

■朝食時間間際に行くと料理がないことも

料理が豊富に用意されているうえ好きなだけ食べることができることから人気の朝食バイキング形式ですが、時間内での提供となるため、遅れると利用することができません。

それは自己責任のため仕方ありませんが、朝食時間終了間際に会場に行くと、ほとんど料理が残っていないことがあります。

遅く行くほうが悪いのでしょうが、安くない料金を支払っているわけですから、ケチくさいと罵られても人間なら返金してもらいたいもの。

そのようなことは、はたして可能なのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解を伺いました。

 

■返金は可能?

「バイキング、それは魅惑の響き。朝ごはんの重要性は広く知られているところですが、そんな朝ごはんに朝食バイキングが用意されているとなれば、寝覚めも良くなるというものです。

なのにホテルで朝食バイキング込みの宿泊料金を支払ったのに、終了時間間際に行ってみたら“料理がほとんどない! 返金されないの?”

最近のホテルでの朝食は、バイキングやビュッフェといった形式での提供が多くなってきていますが、時間が決まっていることがほとんどです。

このような場合、ホテル側は時間内全てにおいて全種類の飲食物を提供する義務があるといえるのでしょうか?」(大達弁護士)

 

■朝食を提供する義務の時間的範囲が焦点

「今回のケースで、ホテルと客との間に締結されている契約は、“バイキング形式の朝食を提供する契約”であると考えられます。

これによってホテルは“バイキング形式の朝食を提供する義務”を負い、客は“代金を支払う義務”を負うことになります。

終了間際に行った際の飲食物提供義務は、この“バイキング形式の朝食を提供する義務”の時間的範囲がどこまで及ぶかという問題として考えられますが、この範囲は、個々の契約によって、すなわち当事者間においてどのような合意があったのか、またはどのような合意があったと推測されるのかという社会通念によって決まると考えられます。

例えば、多数の種類の料理があることを前提とし、またはそのことを謳い文句にして金額が設定されているような場合には、原則として、入店可能時間内に入店したものに対しては、表示されている種類の飲食物を提供する旨の合意があったといえそうです。

他方、多数の種類の飲食物を提供することを謳い文句にしていたとしても、注釈で店側の都合により一部飲食物を提供できない場合があることを明示しているような場合には、バイキング形式の朝食を提供する義務の一部は縮小され得ることになるといえるでしょう。

また、仮にそのような明示がなくとも、営業時間の終了間際ということにもなれば、店側として閉店準備のために、飲食物の一部の提供がなされないことも社会的通念上はやむを得ないと考えられます。

逆に、閉店までまだ随分と時間があり、多数のお客さんが来店しているのにもかかわらず、飲食物が補充されないということになれば、そこには店側の義務違反があるということにもなりそうです。

他方、今回のケースはホテルへの宿泊代を支払ったことに伴う問題ですが、ホテルへの宿泊に対する代金の支払いは、あくまでホテル側の主たる義務である宿泊に対する対価として考えられ、特にバイキング形式の朝食を売りにしているような場合でもない限り、“朝食を提供する”ことは付随的なものと見ることもできます。

そのような場合には、仮に朝食バイキングの品数の一部に不足があったとしても、そのことだけで宿泊料金そのものの返金を求めたり、減額を求めたりということまでは難しいといえるでしょう」(大達弁護士)

 

■程々が一番

「“バイキング”という言葉はもともと北欧の海賊が語源ですが、日本で使われているような食べ放題は、スウェーデンの“スモーガスボード”に由来し、導入当時はスモーガスボードという言葉が難しかったことから、当時流行りであったバイキングという言葉で命名されたそうです。

バイキングというと、豪快な響きがしますよね。ただし元をとろうと豪快に食べ過ぎると、結局健康に害が及んで元をとるどころかマイナスになってしまいます。バイキングも飲み放題もほどほどが一番と、自戒をも込めたメッセージとしたいものです」(大達弁護士)

 

「全然料理がないじゃないか」と納得いかない気持ちを持ってしまうのは致し方ところですが、返金を迫ることはかなり難しいようです。

時間を見計らって朝食会場に行くのがベストかもしれませんね。

 

*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

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*serkucher / PIXTA(ピクスタ)

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