テレビなどではたびたび過労死や長時間労働の報道が流れ、労働環境の改善に本格的に動き始めた企業も多くなっているようです。長時間労働を是正するために夜20時以降の残業は原則禁止としたり、NO残業デーを徹底してみたりと様々な方法がとられています。
しかしながら、業務量やメンバー、マネジメント体制が変わらずただ業務時間を削減したとしても「持ち帰り残業」というかたちでしわ寄せがいくことも少なくありません。
今回はそんな持ち帰り残業について解説してみたいと思います。
■そもそも労働時間とは?
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。要するに労働者が勤務先の指示により働いたり待機したり働くための準備をしたり等して自分の自由にならない時間のことです。
したがって、労働時間に当たるかどうかは、労働契約等で労働時間の計算方法がどのように決まっているかではなくて、実際に労働者が使用者の指揮命令下に置かれていた時間といえるかどうかによって決まってきます。
■持ち帰り残業の場合
持ち帰り残業というのは、勤務先の就業時間で終わらせることができなかった仕事を自宅に持ち帰ってすることをいい、風呂敷残業とも呼ばれます。
持ち帰り残業についても、勤務先の指示であれば使用者の指揮命令下に置かれている時間ですので労働時間に含まれます。
しかし、勤務先から持ち帰って行うよう指示されていないのに自らの判断で勝手に仕事を持ち帰っただけであれば、原則として労働時間に含まれません。
もっとも、勤務先が決められた就業時間だけで終わらせることが到底できないような仕事を労働者に押し付けたような場合、例外的に労働時間に含まれることもあります。
なぜならば、このような場合、残業しなさいとか持ち帰ってやりなさいと言わなくても、残業しなさいとか持ち帰ってやりなさいと言っているのに等しく、いわば黙示的に持ち帰り残業を指示していると評価できるからです。
■持ち帰り残業の証明は難しい
そうはいっても、裁判になれば、持ち帰り残業を含む時間外労働をしたことの証明は労働者側が行わなければならず、これは大変です。
持ち帰り残業の場合は、特に自宅で何時間仕事したかの証明をどうやってやるか、裁判に通用するような証明ができるかどうかといった問題があります。
*この記事は2015年10月に掲載されたものを再編集しています
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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