4月に入社されて、試用期間が半年だった方は、ようやく正社員として採用がなされたのではないでしょうか。
試用期間中も正社員となんら変わらない待遇をしている企業もあり、気がついたから試用期間が終わっていたという方も多いと思います。
一方で、試用期間終了時に「本採用は出来ない」と言われ、社員に退職や試用期間の延長を迫るケースもあるようです。そこで今回は、試用期間とはどういったものか、また、退職を迫ったりすることに法的な問題はないのかといった点について解説してみたいと思います。
■試用期間とは
試用期間とは、正規従業員の採用につき、従業員としての適性を判断しミスマッチをさけるため、期間の定めのない常用雇用社員として採用するものの、3ヶ月とか6ヶ月とかの期間を定めて、その期間中に自社の従業員として適格かどうかを判断する期間のことです。
試用期間については、一般的に、当初から期間の定めのない通常の労働契約であるものの、使用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が大幅に留保されている労働契約であり、本採用拒否は解約権の行使、すなわち雇い入れ後の解雇にあたると考えられています。
したがって、本採用拒否を行うにあたっては、一般的な解雇の有効要件を充足していることが必要となりますが、通常の解雇の場合に比べ、より広い範囲で解雇の事由が認められることになります。
■試用期間を延長することに問題はない?
試用期間は、前述の通り、自社の従業員としての適格性を判定する期間として大幅な解雇権が留保されている期間です。そのため、下記のような場合は試用期間を延長することも許されます。
・試用期間の延長につき明文の就業規則等のある場合
・長年にわたって会社の慣行として試用期間の延長の制度がある場合
・本人の許諾がある場合
・本人の適性に疑問があり、採否について本人の勤務態度を観察する期間が必要でその合理的理由がある場合
もっとも、期間を明示しない形での延長は許されず、延長する期間を限ることが必要となります。
■退職か試用期間の延長を迫られたら…?
前記の通り、本採用の拒否も解雇にあたることから、会社が本採用をせずに退職を迫る場合には、入社後14日を超えているのであれば労働基準法20条の適用を受けて30日前に予告するか、30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務を負うことになります。
会社が本採用をせずに試用期間の延長を迫る場合、前述の試用期間の延長が許される場合に該当するのであれば、格別従業員に対する補償はないことになります。お困りの場合は専門家に相談することをオススメします。
*著者:小泉始(いずみ法律事務所代表弁護士。目の前に起こったトラブルに1人で悩み不安な毎日を過ごされていることと思います。そんな時の為に、弁護士はいます。依頼者を守る「折れない頑丈な傘」として、お役にたてるよう全力で向き合います。まずは、お気軽にご連絡ください)
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