夏休みの取得を却下された…企業独自の福利厚生なら仕方ない?

「7月から9月の間で好きな日に夏休みを5日間申請できる」という福利厚生がある企業もあるようです。

「好きな日に休める」のは嬉しいのですが、休みを後に残していると「仕事が入っちゃったからやっぱり出て」といわれることがあります。

また、申請の段階で、「この日はちょっと……」などと、変更を求められる事態も発生します。

本来「自由に選べる」という前提で日にちを選択させているわけですから、却下や時期の変更は、納得がいきません。このような対応は、法的に許されるのでしょうか?

銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。

Q.日付指定制の夏休みで申請を却下や変更を迫る行為…これは違法ではありませんか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

A.違法性を主張できる可能性が高い。

「休みというのは、年次有給休暇ということになりますね。これについては、労働基準法39条に規定があります。

ただ、具体的なケースについては判例の積み重ねによりある程度理論化されているところであります。

まず、休みをいつ取るか、どのように利用するかについては、労働者の自由(5項本文)で、会社は休暇取得理由によって、休暇を与えたり与えなかったりすることはできません(最高裁昭和48年3月2日)。

ただし、一度に多数の労働者が同じ時期に休暇を取ったりすると、「業務の正常な運営を妨げる」ことがあるので、そういう時に限り会社は有給を別の日に振り替えることができます(「時季変更権」といいます・5項但し書き)。

“業務の正常な運営を妨げる”というのは、判例によると、会社の規模、年次有給休暇を請求した人の職場での配置、その人の担当する作業の内容・性質、作業の繁閑、代わりの者を配置することの難易、同じ時季に休む人の人数等の様々な事情を総合的に考慮して、合理的に決すべきとされています(大阪地裁昭和33年4月10日)。

さらに、判例では、労働者が指定した時季に休暇が取れるように状況に応じた配慮をする義務が使用者にはあるとしています(最高裁昭和62年7月10日)。

以上より、事例の様な場合には、労働基準法39条5項違反ということになり、その違法性を主張することができることになります。ただし、実際に主張したりすると、会社に居づらくなるのかもしれません。一応、不利益扱いの禁止の規定(136条)はありますが……」(小野弁護士)

 

法的には違法性を主張できる可能性が高いようです。しかし、実際に主張すると「嫌がられる」可能性があるのも、また事実のようですね。

*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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*ManabuAsakawa / PIXTA(ピクスタ)

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