「特定地域の出身者は採用を控える」出身地で採否を決めるのは法的に問題ない?

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さる7月中旬、富山県のある企業が「富山県人は閉鎖的な考えが非常に強いので採用を控える」と発言、批判が相次ぎました。

後に同社は発言を撤回する謝罪文を自社サイトに掲載、出身県で採用を控えるようなことはないと明言しています。

今回のケースのように不採用にする条件について明言することはそうそうないでしょうが、企業によっては暗に経験則から特定の県出身者は採用を控えようなどと、不採用条件を出身地で決めてしまうことは考えられます。

法律事務所あすかの冨本和男弁護士に、法的な問題はないのかを伺ってみました。

 

■出身地を理由に不採用は就職差別にあたる

「経験則をもとに出身地で不採用を決めることは就職差別にあたります。就職差別というのは、雇い主が求職者の適正・能力と関係のない事柄や、本人に責任のない事項などで、採用・不採用を決定することをいいます。

出身地に関することは、本人に責任のない事項ですので、出身地を理由に採用・不採用を決定することは就職差別にあたると考えます」

 

なるほど。出身地で採用・不採用を決めると就職差別になるのですね。しかし、世の中ではこうした社内で内密に決めた採用基準を表に出すことはほとんどありません。もし不採用になったことに納得が行かなかったら、企業にその理由を問い合わせて開示させられるのでしょうか?

 

「採用・不採用の理由について、雇い主は開示する義務はありません。採用・不採用の理由について開示するかどうかは雇い主の自由ということになります」

 

出身地を理由に不採用になったと裁判になった例もないのでしょうか?

 

「私の経験ではありません。また、これまで出身地を理由とする採用拒否が問題となった判例は見当たりません」

 

となると、求職する側は雇用者の良心を信じるほかない?

 

「雇い主には採用の自由がありますので、どういった理由で採用を拒んでも採用を強制されることはありません。

しかし、違法な就職差別について慰謝料等を請求される場合もありますので、採用選考に当たっては、求職者の基本的人権を尊重して、適正・能力のみを基準にするようにしてほしいですね」

 

今の日本は雇われる側の有利な売り手市場状態といわれていますが、それは非正規雇用の場合。雇用者の立場の方には、公正で公平なジャッジをくれぐれもお願いします。

 

*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら

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