「別居中の夫がお金を持ち出す…」家族間の窃盗は刑罰が無いってホント?

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「この間うちの子が、勝手に私の財布からお金をとったのよ」「どうもウチの旦那、私の財布からお金を抜いてる気がするのよね」

こんな話、したり聞いたりしたことはありませんか? 子どもや夫が、母や妻のお金を盗むケースでは、家族間のトラブルのため、中々明るみに出ないことでもあります。果たして家族間のこの行為は犯罪になるのでしょうか。

 

■窃盗罪が成立する?

先ほどの話を聞いて、皆さんは窃盗罪に該当するのではないかと考えるのではないでしょうか。窃盗罪について、刑法は次のように規定しています。

 

第235条「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

 

さきほどの話の場合、自分の財産以外の財産を盗るのですから、「他人の財物」という要件は満たしますよね。次に、「窃取」とは、当該財物を占有する者の意思に反して、当該財物の占有を移転させること、と説明されます。

つまり、財物を掌握している人の許可を得ずに財物を移転してしまう行為、ということです。上記事例の場合、母や妻の許可を得ず、母や妻の知らないうちにお金を盗るのですから、「窃取」という要件も満たしそうです。

 

 

■親族間の窃盗には規定がある

しかし、刑法は、親族間の窃盗行為について、次のように規定しています。

 

第244条「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯したものは、その刑を免除する。」

 

つまり、配偶者や直系血族の行った窃盗行為については、犯罪には該当するけども、その刑を免除するということです。この規定の趣旨は、「法は家庭に入らず」との思想の下に、親族間の窃盗事例について、国家は刑罰権による干渉を差し控え、親族間の規律・ルールに委ねるのが望ましいという政策的価値観にあります。

先ほどの話の場合、夫は配偶者であり、子どもは直系血族ですから、本条に該当し、刑が免除されることになります。

夫や子どもが行った行為は、刑法が規定する犯罪行為に該当する。そのため、起訴して判決を出すとすれば「有罪判決」となります。しかし、親族という特別の身分関係を重視して、刑は科さないということです。

上記の結論がみえていることから、実務上、検察官は上記事例のような場合には不起訴処分にすることが多いようです。

 

■別居中の親族が盗みを働いたら?

それでは、息子が既に家を出て家庭をもっているにも関わらず、実家に帰ってきた際に母親の財布からお金を盗った場合はどうでしょうか? あるいは、離婚紛争中で別居している夫が、妻の留守中に家にやってきて、テレビやパソコンを盗った場合は?

ここでもう1度、刑法244条を確認してみましょう。同上が免除する対象は、①配偶者、②直系血族、③同居の親族の3つです。

③の「親族」は、①②に該当しない親族(例えば、いとこや、義理の父母など)を意味し、③にだけ「同居の」という要件が加わっています。

この条文を反対に解釈すると、①②の場合は同居要件は不要という解釈になります。

つまり、別居中の配偶者や、既に独立して家庭をもった子どもが、家族の財物を盗ったとしても刑法244条が適用されて刑は免除されます。

そのため、例えば、別居中の夫が妻の留守中にやってきて、通帳を持ち出して預金を引き出してしまったとしても警察は相手にしてくれないと考えたほうが良いということです(なお、住居侵入罪や、金融機関への詐欺(罪)は別途考慮が必要です)。

実際にこのような事件が起きています。自分の身は自分で守るしかないということですね。身のまわりには十分ご注意下さい。

 

*著者:池田佳謙丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚・相続・交通事故を中心に、民事事件・刑事事件を問わず幅広い案件を扱う。依頼者との強固な信頼関係の下、一心同体で事件と向き合う。)

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中里 妃沙子 なかざと ひさこ 弁護士

丸の内ソレイユ法律事務所

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