夏の行楽シーズンが近づいてきました。中には、海外旅行などの計画を立てている人もいらっしゃるのではないかと思います。
しかし、いつにもましてこれからの時期に気をつけたいのが交通事故。
浮かれ気分で車でレジャーに向かう人が多いぶん、いつもより危険があります。仮に交通事故に巻き込まれてけがをしてしまい、楽しみにしていた旅行に行けなくなったとしましょう。
場合によってはキャンセル料が発生することもありえます。このような場合、事故の加害者に対して、旅行のキャンセル料は請求することができるのでしょうか。今回はこの点について解説していきたいと思います。
■損害賠償に含まれる損害とはどういうものか?
一見、事故と関係がありそうな損害であっても全てが損害賠償の対象となるわけではありません。
判例は、事故と「相当因果関係」がある損害に限り、賠償の範囲に含まれるとしています。典型的な例は、治療費や入通院費、後遺障害に対する慰謝料等が含まれます。
■旅行のキャンセル料も賠償の範囲に含まれる
交通事故のために旅行に行けなくなった場合、そのキャンセル料についても賠償の範囲に含まれるという判例が複数あり、原則的に、加害者に対して請求できるという実務が定着しているようです。
ただ、例えば、事故が起こる前に仕事の予定が入って旅行をキャンセルする必要が生じ、その後事故が発生したという場合には、キャンセル料の発生と交通事故の間には相当因果関係がないと判断されることになるでしょう。
このような場合には、キャンセル料を請求できないと考えられます。
いくらキャンセル料が返ってきたとしても、楽しみにしていた旅行に行けなくなるのは困りますし、その後けがの後遺症が残っては、後々大変な思いをすることになります。
事故を起こさないのはもちろんのこと、交通ルールを守るなどして事故に遭わないようできる範囲での自衛をすることも大切です。
*著者:弁護士 寺林智栄
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