話題の新SNSマストドン(Mastodon)、あなたはもう使い始めてますか? この4月からユーザー数が急増中で、ポストTwitterとも目されているそうです。
スマホの普及やサービスの充実によって多くの人が様々なSNS活用するようになった現在、中には「こんな変な人がいた!」と街中などで見つけた他人の写真をアップする晒し行為も見受けられます。
このような行為は、法的に問題ないのでしょうか? パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に質問しました。
■無断撮影やネットにアップは肖像権侵害の可能性あり
電車内など公共の場で目立っている人の写真や動画を撮影し、SNSやYouTubeにアップする行為は、何か罪に当たりますか? 該当する罪があればその法律の内容や成立要件などを教えてください。
「まず前提として、撮影行為自体が犯罪となる場合があります。例えば、東京都の『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例』では、『(略)公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影(略)』すること(いわゆる「盗撮」)が禁止(条例5条1項2号)されており、違反した場合は『1年以下の懲役または100万円以下の罰金』に処せられる(条例8条2項)ことがあります。
そうした『盗撮』にあたるものではなく、例えば、電車内でお酒を飲んでいる人を撮影するといった行為は、犯罪にはあたりません」(櫻町弁護士)
盗撮という罪は、下着姿や裸でなければ成立しないのですね。ということは、ちゃんと服を着ている人なら他人を勝手に撮影してもOKということでしょうか?
「いいえ。人には『みだりに自己の容ぼう等を撮影され、これを公表されない人格的利益』(最高裁平成17年11月10日判決)がありますので、対象者に無断で撮影をした場合には、『肖像権侵害』として違法とされることがあります。
そして、撮影が違法な場合には、画像等をSNSにアップロードする行為も違法となります」(櫻町弁護士)
無断撮影自体を禁止する法律はありませんが、無断撮影は肖像権の侵害にあたるのです。なお、撮影について承諾を得ていた場合でも、SNSへのアップロードはまた別。撮影は許可されていてもアップロードが許可されていなければ、肖像権侵害とされる可能性があるそうです。
■晒されたら損害賠償請求できる!
晒された人はこの行為に対し、訴えたり損害賠償請求したりできますか? その際に必要な手続きや、すべきことなどを教えてください。
「無断撮影及びSNSへのアップロード(=不特定多数への公表)について、撮影・アップロードをした人物に対して肖像権侵害を理由とする損害賠償請求や、画像等の削除請求をすることができます。
また、画像等の削除については、画像等がアップロードされている媒体のサービス管理者(コンテンツプロバイダ)に対しても請求することができます。
なお、撮影・アップロードした人物が誰か分からない場合は、まずはその人物を特定する必要があります。
手続としては、コンテンツプロバイダに対しIPアドレス等の開示を請求し、IPアドレスが開示された場合には、そのIPアドレスを管理しているプロバイダ(インターネット接続事業者)に対し、当該IPアドレスを使用して画像等をアップロードした人物の氏名・住所等の開示を請求します。
そして、氏名・住所等が開示された場合には、その者に対して損害賠償や削除を請求する、という流れになります」(櫻町弁護士)
知らないうちに撮影され見世物にされるのは不愉快なものですし、それがもとになって生活や仕事に悪い影響がもたらされることも考えられます。
自分がおもしろいと感じたものを不特定多数と共有することもインターネットやSNSの楽しみのひとつではありますが、誰にでも肖像権があり安心して暮らす権利があることを忘れず、節度を持って活用していきたいものです。
*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
【画像】イメージです
*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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