上場しているなど、それなりに規模の大きい企業だと、「従業員持株会」などというものがあり、自社の株を実質市場価格よりも割安で買うことができます。
会社の業績が上がれば、自分が保有している自社株の資産価値も上がるため、従業員のモチベーションや愛社精神を高める狙いで導入されることの多い制度です。
ただ、会社によっては、給与の一部が自社株で支給されたり、持株会への加入が強制となっていたりするところがあるようです。このような行為は法的に問題ないのでしょうか……?
Q.給与の一部が自社株で支給なんてあり?
A.会社と労働組合とで合意がなされていれば、個人の同意がなくとも社員全員を「持株会」に強制加入させ、給与の一部を自社株で支給したり、自社株の購入費用を給与天引きしたりすることは可能です。
まず、大前提として、法律上は「賃金支払い5原則」というものがあり、給与は「通貨で」、「全額」を支払わなければならないとされています。
そうすると、自社株での現物支給や自社株購入費用の給与天引きなどは一見すると違法のように見えますが、実はこれには例外があり、労働組合と会社とが合意してさえいれば、給与の一部を現物(株式や商品券など)で支払ったり、自社株の購入費用を給与天引きしたりすることが可能とされています。
「従業員持株会」についても、加入を強制とするか任意とするかは会社と労働組合とで自由に決めることができるため、加入が「強制」とされている会社にお勤めの場合、上記のように給与が一部株で支給されたり株の購入費用が天引きされていたりしたとしても違法ではないのですね。
とは言え、従業員持株会は従業員の安定的な資産形成を助けるという福利厚生的な側面もあるので、一応会社・従業員の双方にメリットがある制度なのだということは押さえておきましょう(それでもこの制度に納得がいかない場合は、自身が労働組合の中で制度の変更を提案することが必要になります)。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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