3月7日、関西地方の不動産会社に勤務する女性が、物件を紹介する動画の音声を消えているものと勘違いし、男性を誹謗するような会話が入ったままYouTubeにアップロードされる事案が発生。
さらに他の動画でも卑猥な発言や私的な会話、さらに放屁などが録音されていたうえ、物件に対する乱雑な振る舞いが「不動産会社社員にふさわしくない行動」と批判を受けています。
この社員がどうなったのかは不明ですが、一部では解雇されてしまったのではないかとの噂があります。「ウッカリ」の代償は、かなり大きなものになってしまいました。
■ネットでの誹謗中傷は少なくない
最近はニコニコ生放送やツイキャス、ふわっちなど自ら動画を配信することが容易になる世の中になりました。それに比例して、動画内で第三者を誹謗中傷する、馬鹿にするなどの事案が発生することが多くなり、警察が出動する事態に至るケースもあります。
また、SNSでも嫌な思いをしている人は多いと聞きます。いわれなき誹謗中傷や、過激な悪口など、匿名性が担保されているサイトほどそのような光景を目にします。
そのような書き込みには慰謝料の請求や名誉毀損罪での提訴を検討したいところです。しかし、匿名性が高いネット社会でそのようなことは可能なのでしょうか?
■匿名性の高いネット社会で誹謗中傷者を訴えることは可能なのか?
まず慰謝料の獲得についてですが、目に余る名誉毀損や悪口を書き込んだ者については、プロバイダ責任制限法を活用することで、情報の開示を求めることができます。
ただ、実際に書き込んだ者を特定するためには、まずサイト運営者にIPアドレスの開示を求め、それにより判明するプロバイダに対して契約者の情報を求めなければならず、しかもログの保存期間は書込みから3~6か月程度のため、迅速に動くことが求められるなど、ハードルは低くありません。
書込みをした者の情報を得ることができれば、慰謝料を請求することができます。相手が素直に支払わない場合には、裁判を起こすことになるでしょう。
なお情報の開示を求める場合は、そのURL、動画、書き込みのスクリーンショットなど証拠が必要となりますので保存しておきましょう。
■削除依頼に応じない場合は……
動画や書き込みの削除については、運営者に通報することが基本的な対応です。その際、単に通知をするだけでは対応してくれないことが一般的であり、自分の権利が侵害されたということのきちんとした説明と、本人確認書類を送ることが必要です。
本人確認書類は、免許証やパスポートの写し、印鑑証明書などが想定されています。
なお、自分で対応することが難しいと考えた場合などは、法務局が削除の対応や、場合によっては開示請求についても援助してくれることがあるので、相談してみるとよいでしょう。
悪質な書き込みに悩んでいる方は、弁護士に相談するとともに、法務省の人権擁護機関への相談も検討してみましょう。
*記事監修弁護士:清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*poosan / PIXTA(ピクスタ)
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