近頃はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で盛り上がっていますね。侍ジャパンは土つかずの6連勝で準決勝進出を果たしました。先行きが気になっている方も多いのではないでしょうか?
さて、3月7日に行われた、日本対キューバ戦で、山田哲人選手の放ったホームラン制の打球をレフトスタンドに居た観客の少年がグラブでキャッチし、妨害して二塁打にするという事案が発生しました。
ネットでは子どもへのバッシングが展開され、素顔や住所が公開されてしまう事態に。山田選手が「次もグローブを持って来場してほしい」と呼びかけフォローしましたが、試合の勝敗を左右しかねない行為だっただけに、批判が根強いようです。
今回のような「野球場の妨害行為」は稀に発生。かつてはグラウンドに観客が乱入したこともあります。その場合、乱入者はどのような罪に問われるのでしょうか?
Q.野球場に乱入して試合を妨害…この場合罪になる?
A.威力業務妨害罪に問われる可能性があります
野球のゲームの進行を妨害するような行為については、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
1990年、スパイダーマンのような格好をした男が広島市民球場のバックネットに登り、「巨人軍ハ永久ニ不潔デス」などと書かれた垂れ幕を掲示する事件がありましたが、この男は威力業務妨害罪で現行犯逮捕されたうえ略式起訴され、罰金20万円の刑事処分を受けています。
かつては誤審に憤った観客がグランドに降りて抗議するなどの行為もありましたが、現在はそのような光景を見ることもは少なくなりました。
このような行為は一般的に、抗議の仕方によっては、威力業務妨害罪が成立する可能性がありました。乱闘騒ぎになれば、暴行罪が成立する可能性もあったといえます。
最近は、ネットで写真が拡散される危険性が高い影響からか、このようなシーンは見ることが少なくなりました。
ただし、今回のケースについて威力業務妨害罪が成立することはないでしょう。野球のゲームの進行そのものを妨害したわけではないですし、なにより、この子どもには、ゲームの進行を妨害する意思(故意)がないからです。
また、余談になりますが、14歳未満の子は「刑事未成年者」に該当し、仮に犯罪行為を行った場合でも処罰されません。
とはいえ、先ほどのスパイダーマンのケースのように、興行の進行を妨げる行為を行えば、場合によっては、威力業務妨害罪に問われる可能性があるということを忘れないようにしてもらいたいと思います。
*記事監修弁護士:寺林智栄
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*うさぴょん太郎 / PIXTA(ピクスタ)
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