ところでデッドボールや乱闘って傷害事件じゃないの?

プロ野球が開幕しましたね!

毎日試合の行方を追っている方も多いのではないでしょうか?今シーズンも横浜DeNAが健闘しているようです。

そこで今回はシーズン開幕にあわせて、意外と知られていない(?)野球ネタについて弁護士視点から検討してみたいと思います。

故意にデッドボールを投げた場合は傷害罪が適用されるのか、乱闘は傷害罪にならないのか、考えてみると気になってしまいますよね。法律的にはどうなるのでしょうか?

デッドボール

傷害罪が適用されると、1か月以上15年以下の懲役刑又は1万円以上50万円以下の罰金刑が課される可能性があります。

傷害罪のほとんどは暴行によって他人が負傷するケースです。この場合、傷害罪が成立するためには、「暴行をする意思」(=「故意」)があれば足ります。傷害結果の発生を予見できなくても、故意に基づく暴行の結果、傷害が発生すれば、それで傷害罪は成立するのです。

 

■故意にデッドボールを投げた場合は傷害罪が適用されるのか

「暴行をする意思」(故意)とは「暴行をする意図」よりも広い概念で、「暴行の認識」があれば足りるとされています。

つまり「故意にデッドボールを投げた」とは、ピッチャーの側から説明すると、「打者にボールをぶつけてやろうと考えて、あえてデッドボールを投げた」というケースだけではなく、「ぶつけてやろうとまでは考えていないが、ぶつかってもかまわないと思ってボールを投げた」というケースも、含まれるのです。

どちらのケースでも、その結果、ボールが当たり、打者が怪我をすれば、形式的には「傷害罪」に該当します。しかし、実際にデッドボールに傷害罪が適用されたケースは、私が知る限りではありません。

この点については、「証明責任」という刑事裁判の大原則が関わっていると考えられます。ある人の行いが犯罪に該当することは、検察官が証明しなければなりません。つまり、デッドボールの件を傷害罪で罰するためには、故意があったという点も含め、捜査機関が、裏付けとなる証拠や証言を集めなければならないのです。

例えば、監督がピッチャーに対して指示した結果、ピッチャーがデッドボールを投げたケースでは、監督やピッチャー、会話を聞いていた同じチームの選手らがそのような事実を証言をすることは、まずないでしょう。会話が録音されているということもまずないと思われます(注:このケースでは、監督も傷害罪の共犯になりえます)。

証言や証拠を集めにくいため、誤ってぶつけたケースと区別ができない。だから、故意のデッドボールは傷害罪には該当するけれども、実際には処罰されにくいのです。

 

■乱闘は傷害罪にならないのか

一方、試合中の乱闘によって負傷者が出た場合も、暴力をふるった人、指示を出した人は誰か、どんな暴力があったのかなどが明らかになれば、暴力をふるった人、指示をした人などに傷害罪が成立します。

しかし、乱闘でけが人が出ても、やはり同じように傷害罪で処罰されるケースは極めてまれです。このケースでも、やはり、捜査機関が証拠を集めることは難しいといえますが、映像が残っているケースもあるので、デッドボールの場合よりは、傷害罪が適用されやすいといえます。

それでもほとんど適用されないのは、被害届が出されないことが最大の理由ではないでしょうか。捜査機関は、多くの場合(注:殺人などの重大犯罪は除きます)、被害届が出されて初めて捜査に着手するのです。

乱闘騒ぎは、選手や監督が全力で試合に臨んでいるからこそ起こりうるものです。それに対しては、退場や出場停止など、プロ野球独自の制裁が科されます。

そういう野球界の制裁で事を済ませて、警察沙汰にまでするのはやめようという阿吽の呼吸が、プロ野球界全体にあるのではないでしょうか。だからこそ、被害届が出されず、傷害罪が適用されないのが実情ではないかと思われます。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)

寺林 智栄 てらばやしともえ 弁護士

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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