2年で時効になる有給休暇…どんなときに買い取ってもらえる?

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日本人は働きすぎとよく言われますが、それを象徴しているかのように、28ヶ国を対象に行われたエクスペディアの調査によると、2016年の日本人の有給消化率は50%と最下位になりました。

有給休暇は与えられてから2年が経過すると時効をとなり使えなくなってしまいますが、この調査結果から鑑みると多くの人が使い切ってはいないというのが実情ではないでしょうか。

そこで今回は、有給休暇の基礎知識と、有給休暇の買取りが認められているケースについてご紹介したいと思います。

 

■有給休暇の基礎知識

有給休暇は正式には、年次有給休暇と言い(「年休」・「有休」と呼ばれることもあります。)、休んでも給料がもらえる休暇のことをいいます。

年次有給休暇は、労働者の健康やプライベートを充実させるために認められる労働者の休暇であり(「年休権」です)、正社員だけでなくパートやアルバイトの方でも取得することができます。

年次有給休暇は、雇われた日から計算して6ヶ月間続けて働いていて、本来出勤しなければならない日(「全労働日」といいます)の8割以上出勤した場合に取得できます。

年次有給休暇を取得できる日数は、雇われた日からどれだけ続けて働いているかにより、「6ヶ月で10日」、「1年6ヶ月で11日」、「2年6ヶ月で12日」と増えていきます(「6年6ヶ月以上で20日」)。

もちろん、これは労働基準法が定める最低限であり、この日数だけは有給で与えなければ法律違反になってしまうということであり、会社の方でさらに年次有給休暇をプラスして労働者に与えることはできます。

年次有給休暇を使うためには、労働者の方でいついつに年有給休暇を取りたいと「請求」する必要があります。

労働者が年次有給休暇を請求したきた場合、使用者は原則として認めなければいけませんが、その日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるような場合、使用者は労働者に対し別の日にしてくださいと変更することができます。

 

■有給休暇の買取りが認められるケースについて

年次有給休暇は、労働者を休ませるための休暇ですので、買取りを認めてしまうと意味がありませんので、原則として買取りは認められませんが、3つの例外があります。

 

①法律が認める年次有給休暇の日数を超えて有給休暇を労働者に与えていた場合

その超えている部分について買取りをしても法律に違反するわけではありません。

 

②時効を迎えて消滅してしまう年次有給休暇を買い取る場合

労働者が年次有給休暇を請求するのを忘れた場合、年次有給休暇も使わないと2年で時効消滅してしまうわけですが、時効消滅してしまった分を使用者が買い取ることは認められます。

 

③退職時までに消化できなかった年次有給休暇を買い取る場合

年次有給休暇は在職中にしか使いようがありませんから、退職時までに消化できなかった分について使用者が買い取ることも認められます。

 

ただし、以上の買取りも労働基準法に違反しないだけであり、年次有給休暇を労働者に認めた目的からは必ずしも好ましいとは言えません。

労働者の方は与えられた年次有給休暇を適切に使うべきですし、使用者の方も労働者に年次有給休暇を消化させるべきだと思います。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

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冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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