離婚したいけれど相手が応じないという場合、最終的に裁判を起こすこともありえます。
しかし、裁判で離婚することができるのは、5パターンあり
(1)浮気・不倫(不貞行為)
(2)悪意の遺棄
(3)3年以上の生死不明
(4)配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないこと
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由
のどれかに該当する場合に限られます。
このうち(5)は表現が抽象的で分かりにくいのですが、例えば、DVであるとか、長期間の別居などが該当すると言われています。
では、結婚した後に、相手の学歴詐称や年収詐称、整形が発覚した場合、それが(5)に該当し、裁判で離婚できる理由になるのでしょうか。今回はこの点について考えていくことにします。
■「整形」理由で裁判離婚はできない
相手が整形手術を受けていたことを理由に裁判離婚することは、通常はできないでしょう。
通常、「整形手術をしていないこと」が結婚の条件になっていることはないでしょうし、また、相手が結婚当時整形後の顔をしていたことも含めて愛情が生まれ結婚に至っているわけですから、過去に整形手術を受けていたことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとは考えられません。
但し、当事者が整形嫌いであることを相手が知っていて、結婚前に整形前の顔を隠すために、他人の写真や修正を施した写真を相手に見せるなどして、ことさらに整形の事実を隠すようなことをしていたよ場合には、整形の程度にもよるでしょうが、裁判離婚原因になる可能性があると考えられます。
■「学歴詐称」や「年収詐称」は裁判離婚原因になりうる
学歴詐称や年収詐称は、婚姻当時の自分を偽るものです。そして、学歴も年収も、結婚の条件となることが多いものです。ですので、詐称の程度にもよりますが、裁判離婚原因になる可能性が相当程度あると考えられます。
例えば、中卒であるにもかかわらず、一流大学を出ていると詐称しているケース、年収が実際には数百万程度であるにもかかわらず、数千万円の年収があると偽っているケースなどが考えられます。
年収詐称のケースでは、経済的に豊かであることを装うために多額の借金を背負っている可能性もあり、そうすると、結婚後の相手の生活にも経済的に多大なる悪影響が生じる恐れがあります。学歴詐称は年収詐称と一体化する傾向がありますので、そうすると同じ問題が生じます。
したがって、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しうるといえるのです。
しかし、それ自体裁判離婚原因になるものでないとしても、隠していることがばれてしまうと夫婦関係は悪化してしまいます。その結果別居となり、別居期間がある程度の長さになれば、最終的には裁判で離婚できることとなってしまいます。
隠し事をしたり嘘をついたりして結婚をしても、最終的には失うものの方が多いということでしょう。
*著者:弁護士 寺林智栄
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*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
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