東京・新宿区にある診療所新宿セントラルクリニックにて、院長を務める男性が60代の男性患者に対して「性感染症に感染している」と嘘の診断をして、男性患者から治療費をだまし取ったことが明らかになり、1月17日に警視庁は院長の男性を逮捕したようです。
同様の方法で昨年9月から12月に数千人を診断したとも報じられており、被害額は数千万円に上る見込みだということです。
そこで、今回は嘘の診断の違法性についてや、今後の処分について解説していきたいと思います。
■嘘の診断の違法性について
嘘の診断そのものについては、何らかの犯罪が成立するわけではありません(公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載を書けば、虚偽診断書作成罪に問われることはあります)。
ただ、嘘の診断をして、治療費を騙し取ったということになれば、詐欺罪が成立しますし、民事でも不法行為が成立し、損害賠償請求の対象になります。つまり、民事上では、騙し取る行為と相俟って、嘘の診断が違法となるわけです。
■間違った診断をしたが、故意ではなかった場合は?
過失の内容によりけりです。医師としての一般的な注意義務をもってすれば、誤診を通常は防げたということであれば、同じように民事では不法行為が成立し得ることになります。
■どういった処分が下されるのか
医師が犯罪行為によって罰金以上の刑に処せられた場合、厚生労働大臣による行政処分の対象となります。実質的に量刑を決めるのは、医道審議会です。
詐欺行為を行ったということであれば、「重い処分」となりますから、免許停止、或いは、医療停止の処分となるだろうと考えられます。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所代表。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする)
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