平成21年10月に、島根県立大学の学生だった平岡さん(当時19歳)がアルバイトを終えた後に行方が分からなくなり、その11日後に、およそ25キロ離れた臥龍山の山頂付近の付近で、遺体の一部が発見されました。
警察によると、事件の2日後に山口県内の高速道路で起きた事故で死亡した30代の会社員男性が、事件に関与している疑いがあるということから、殺人などの容疑で書類送検する方針であると報じられています。
まだ現段階では書類送検はされていないようですが、「すでに事故で亡くなっている人を書類送検する」ということはどういった意味があるのでしょうか? また、(今回の例に限らずが)事件発生から書類送検、その後の一般的な流れについても解説したいと思います。
■「送検」には「身柄送検」と「書類送検」の2種類あり
警察は、例外的な微罪事件を除き、犯罪の捜査をしたときは、事件を検察官に送致しなければならないとされています(刑事訴訟法246条)。この事件を検察官に送致することを「送検」と言います。
送検には2種類有り、逮捕した場合に犯人ごと送検する場合を「身柄送検」、逮捕しないで書類のみを送検する場合を「書類送検」と言います。
本件では、被疑者が既に死亡していますので、「身柄送検」はできません。また、微罪事件でもありませんので、書類のみを送検する「書類送検」を刑事訴訟法に基づいて行うということになります。
■不起訴処分が決まっていても被害者の損害賠償請求に「書類送検」は有用!
それでは、検察官は、書類送検された後にどのような処分を行うのでしょうか?
刑事訴訟法には、339条1項4号に、「被告人が死亡したときには、決定で公訴を棄却しなければならない」とされており、被告人が死亡している場合には、公判を維持できないことになっています。それとの関係で、検察官は、書類送検された事件については、必ず「不起訴処分」とすることになっています。
不起訴処分にするのであれば、書類送検する意味が無いのでは? と思われるかも知れませんが、捜査結果がキチンと残ることで、被害者による損害賠償請求(対保険会社、対遺族)の証拠ともなり得ますので、有用なことに間違いありません。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
【参考】
NHK NEWS WEB:島根 浜田の女子大学生殺害事件 死亡の男を書類送検へ
【画像】イメージです
*naka / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*タクシーに接触した「ノンスタ井上」…どんな罪に?処分はどうなる?
*自転車の飲酒運転で人身事故…被害者が大ケガをしたら法的にどうなる?
*交通事故を起こしたのに「警察に言わないで解決」はしてはいけない