「週4勤務で月給1万円」「残業が月150時間」…こんな時はどう対応すればいい?

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電通社員の過労自殺など違法な長時間労働を受け、11月に労働厚生労働省が過重労働に関する無料の電話相談を実施しました。相談内容が報じられるとあまりにもひどい内容でネット上でも騒然となったようです。

今回は寄せられた相談の中で具体的な例を2つピックアップし、同じような状況に陥った場合にどのような対応を取れば良いか解説していきたいと思います。

 

■月に140~150時間の残業があった場合

労働基準法は、週40時間、1日8時間以上労働者に労働させてはいけないと定めています(労働基準法32条)。加重な労働から労働者を保護するためです。したがって、月に140~150の残業時間のうち、このルールを超えて残業をさせている部分は原則として労働基準法違反ということであり雇い主が処罰されることもあります(労働基準法119条)。

また、労働基準法は、労使協定を結んで行政庁に届出すれば、週40時間、1日8時間を超える労働をさせることも認めています(労働基準法36条 「36協定」といいます)。

この場合、雇い主は週40時間、1日8時間以上労働させても処罰されません。

もっとも、厚生労働大臣は、36協定の時間外労働の上限に関する基準(限度時間)を定めており、それによれば限度時間は1ヶ月で45時間となっております(「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」平成10年労働省告示第154号、平成21年厚生労働省告示第316号)。

 

したがって、雇い主がこの限度時間を守らず時間外労働をさせているようであれば、厚生労働大臣の定めた基準に従っていないわけですから、雇い主への助言・指導(労働基準法第36条第4項)を求めて行政官庁に駆け込むことが考えられます。

また、36協定といっても雇い主が処罰されないだけで、労働者に時間外労働の労働義務を発生させるものではありません。

ですので、現実的ではないかもしれませんが、時間外労働が労働契約や就業規則で認められていない場合、労働者としては、そもそも時間外労働する義務がないわけですので、義務がないことを理由に時間外労働を拒否すること、拒否したことを理由に不当な処分を受けた場合には処分を争っていくことが考えられます。

 

■週に4回の勤務で月給が1万円の場合

週に4回の勤務で月給が1万円とは些か信じがたいですが、この場合は最低賃金法に違反すると考えられます。最低賃金法は、賃金の最低基準を設定した法律ですが、労働条件を改善して労働者の生活を保護するための法律です。

最低賃金法によれば、雇い主は労働者に最低賃金以上の賃金を支払わなければならず(最低賃金法4条1項)、違反すると処罰されます(最低賃金法40条)。

 

したがって、最低賃金法違反を理由に告訴することが考えられます。

また、最低賃金を下回る賃金額の労働契約はその部分について無効となって、最低賃金額が契約上の金額となりますので(最低賃金法4条2項)、労働者としては雇い主に対し、最低賃金額を請求していくことが考えられます。

一方で、雇い主が、給与の天引きをしていると主張することも考えられます。ですが、雇い主は賃金を原則として全額支払わないといけません(労働基準法24条1項)。

給与からの天引きが認められるのは、所得税・社会保険料などの源泉徴収の法令で認められている場合や労使協定で組合費を徴収する場合だけです。

雇い主から給料をもらっている手前なかなか主張しづらいとは思いますが、雇い主が労働者の扱いについて法令に違反していても労働者が主張していかなければ改善されることは普通ありません。

勇気のいることですが、違法な扱いを受けている労働者には、労働基準監督署や弁護士会の法律相談で予備知識を得たり協力を得ることによって、主張すべきことは主張した方がいいと思います。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

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冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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