パートの就労意欲を奪っているのでは? という意見もある現在の「配偶者控除」制度ですが、11月16日、この原因とされている夫婦の一方(主に主婦の妻が対象)の年収上限「103万円の壁」を変えるべく、自民党税制調査会が見直しの議論を本格化したとの報道がありました。
これまでも廃止案や配偶者控除に変わって「夫婦控除」を導入するなど、様々な議論が交わされてきましたが、今回の見直し議論によって、「年収要件を103万円から130万円、もしくは150万円にする」ことで一旦は落ち着きそうな気配です。
ではこの年収要件が変わることによって、我々の生活にどのような影響があるのでしょうか? 130万円、150万円それぞれのケースで見ていきましょう。
Q.配偶者控除の年収上限が「103万円」から「150万円」に引き上げられるとどうなる?
A.妻の年収が150万円の場合、妻の「所得税負担が年間約2万3,500円」、加えて「社会保険料が年間約27万円」増える
配偶者控除の対象が150万円に引き上げられても、夫が会社員の場合、妻の年収が130万円を超えると妻自身がこのように社会保険料を支払う必要があります。結局、「年収130万円」が「就労の壁」となる可能性が高くなります。
一方、財務省案として、夫の合計所得が約900万円(年収1,120万円)を超える世帯は対象外になる案も出ています。
夫の年収が1,121万円の世帯は、配偶者控除が一挙にゼロになると、夫は年間約7万6,000円(月約6,400円)の所得税が増えることになります。
Q.配偶者控除の年収上限が「103万円」から「130万円」に引き上げられるとどうなる?
A.妻の年収が130万円の場合、「所得税の壁」と「社会保険料の壁」が同じ額になる
「年収130万円」は元々「会社員の妻が社会保険料を自分で支払う年収の壁」なので、「所得税の壁」と「社会保険料の壁」が同じ額になることになります。
夫の年収が一定以上だと、配偶者控除38万円を一挙に無くしてしまうのではなく、「年収150万円」なら夫の年収1,120万円から配偶者控除額38万円から徐々に減り始め、1,220万円で配偶者控除がゼロになります。「年収130万円」なら夫の年収1,320万円から配偶者控除額38万円から徐々に減り始め、1,420万円で配偶者控除がゼロになる仕組みが検討されています。
一方、配偶者の年収上限が「130万円」の場合でも、夫の合計所得が約1,100万円(年収1,320万円)を超える世帯は対象外になる案も出ています。
夫の年収が1,321万円の世帯の場合、配偶者控除38万円が一挙にゼロになると夫は年間約8万7,400円(月約7,300円)の所得税が増えることとなります。
*上記の所得税の計算は扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などは考慮しておりません。
*取材・文:拝野洋子/はいのようこ(社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー 。はいの事務所代表。大手地方銀行入行後、税理士事務所などに勤務し助成金支給申請、損保代理店業務、行政書士補助等を経験。その後電話年金相談員、労働施策アドバイザーなどを経て、主に個人向けマネー記事等を執筆。『All About』で出産育児・給付金ガイド、『ココライン』にて子育て・お金アドバイザー、ほか『Woman money』 、『マネーの達人』などに執筆。Yahoo!Kazok「妊娠出産手続き得するお金チェックリスト」、ダイヤモンド・ザイなどの雑誌で監修。HP「気軽に相談!人と保険とお金の情報テラス」、ブログ「家計にやさしい年金保険講座」)
【画像】イメージです
*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*87歳が運転する軽トラが児童を死傷…増加する認知症高齢者の事故が抱える法的問題とは
*【博多駅前陥没】パーキングから車が出せない…駐車料金の支払いは法的にどうなる?
*博多の道路陥没で銀行システムにトラブルが…入金が遅れたら責任はどこへ?