■福岡市が責任を追う必要はあるのか?
では、福岡市が責任を負うことになるのか、ということになりますが、これはなかなか難しいところです。もちろん、他人様であるAB間の契約を妨害したことになりますが、福岡市はAB間の契約について関わっているわけではないので、福岡市に債務不履行責任を負わせるわけにはいきません。
考えられるのは、福岡市に不法行為責任が発生するか、ということです。契約上の請求権というのは、「債権」と言いますが、債権は取引関係者間でのみ効力があるに過ぎないので、このような性質のものに不法行為を成立させるためには、福岡市側に、「積極的に妨害しようとする意思」つまり、「故意」が認められなければなりません。
本件の陥没事故による妨害行為について、福岡市に「故意」を認めることはできないでしょうから、「故意」に匹敵するほどの「重過失」があるかどうかが一つの争点になりうるものと思います。
もし、そこまでの重大な過失があれば、取引によって損害を被った側が、福岡市に対して損害賠償請求できるのではないか、と考えます。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
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