■職場に正社員の就業規則しか存在しない場合は?
実際には職場内に様々な雇用形態の社員がいるのにも関わらず、1種類の就業規則しか社内に存在しない場合、どのような労務リスクが想定されるのでしょうか?
「正社員を前提とした1種類の就業規則しか作成していないということになると、正社員以外の労働条件が不明確なままになってしまい、トラブルの元となります。
特に短時間労働者については短時間の勤務ということから多様な働き方が予定されているため、労働条件について疑問が生じるということはよくあります。そのため雇用時に労働条件を明示すると同時に、パート用の就業規則をつくることも望ましいでしょう。」(大窪弁護士)
複数の雇用形態で働く従業員がいる会社は、その雇用形態の内容に即した就業規則をそれぞれ作ることが重要になってくるのですね。
■従業員ごとの就業規則を作成するポイントとは?
では、実際に従業員の区分ごとに就業規則を作成する場合、留意すべきポイントをいくつか例示していただけますでしょうか?
「従業員の区分ごとに就業規則を作る場合において、個別の従業者をほかの従業者に比べて労働条件が不合理な差がある場合にはその規則は公序良俗に反し無効となり、通常の従業員に対する就業規則が適用されることになります。
就業規則の作成または変更について、事業所の代表者の意見を聞く必要がありますが、個別の従業員区分に関わる事項について就業規則を作成変更する場合については、その区分に属する従業員の代表者の意見を聴くように努めることが求められます。
短時間労働者については、通常の労働者に転換することを促進するための措置を講じることが法律上求められていますので、その措置の内容について就業規則上も記載することが望ましいですね。」(大窪弁護士)
雇用形態が異なるからといって何でも差をつけてしまっていい、ということではありません。実際に就業規則を作成する場合には、それぞれの区分の従業員と打ち合わせをしながら内容を作り上げていくことが重要なプロセスになると言えそうです。
*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間の間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。北海道紋別市で3年間、鹿児島県奄美市で3年間公設事務所の所長をつとめたあと、再度北海道に戻り名寄市にて弁護士法人の支店長として5年間在任。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。
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* elwynn / PIXTA(ピクスタ)
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