もしもに備えて知っておきたい!「当番弁護士制度」を利用するための7つのポイント

「当番弁護士」という言葉を聞いて、具体的にどのような仕事をしているのか想像できない方も多いと思います。こちらは簡単にご説明すると、逮捕・抑留されてしまった場合などに無料で弁護士に相談できる制度です。

私も当番弁護士として何度かお仕事をしたことがございますが、まだまだ世間的な認知度は低いと感じます。また、最近では民事や家事といった個人間での裁判においても、この制度を利用できるケースも出てきています。

そこで今回は、この制度の概要紹介とともに、具体的な依頼方法など7つのポイントについて解説していきたいと思います。もしもの時に備えてぜひ仕組を知っておけば、きっと役に立つはずです。

※画像はイメージです:https://pixta.jp

 

■1.当番弁護士とはどんな制度か

当番弁護士とは、弁護士会が当番制でいつでも出動できるように弁護士を待機させ、逮捕・勾留された人やその家族・知人から面会の要請があった場合に弁護士を出動させ、弁護士が「1回だけ無料」で面会し逮捕・勾留された人の相談にのるといった制度です。

逮捕・勾留された人は、自分が今どういう状況にあるか、これから自分がどうなっていくのか、自分にはどういった権利が認められているのか、どうしたらいいのか、よくわからないのが普通です。

そこで、逮捕・勾留された人が、弁護士に気軽に相談にのってもらえるようにするためにできた制度が当番弁護士制度です。

 

■2.当番弁護を依頼するには

逮捕・勾留されている人の場合、警察署・検察庁・裁判所の人を通じて当番弁護を依頼します。逮捕・勾留されている人は当番弁護について知らないのが普通ですので、教えてもらって依頼することになります。

家族や知り合いの場合、担当地域の弁護士会に連絡し、面会しに行ってもらいたいと当番弁護を依頼することになります。

当番弁護の派遣は弁護士会のボランティアで、昔は一部の弁護士会だけで行われていましたが、現在では全国各地の弁護士会で行われています。

 

■3.当番弁護を依頼後の流れ

当番弁護の依頼を受けた弁護士会は、その日当番として待機している弁護士に連絡をとり、氏名・罪名・拘束場所を伝え、当番弁護士を出動させます。被疑者・被告人が外国人である場合には、通訳も手配します。

 

■4.連絡を受けた当番弁護士は

連絡を受けた当番弁護士は、原則としてその日に出動しなければなりません。

当番弁護士は、拘束場所となっている警察署留置係に連絡をして、現在の状況を確認し、面会の希望を伝えます。被疑者・被告人が検察庁や裁判所にいる場合、検察庁や裁判所で面会することも考えられますが、タイミングもなかなか合わず、警察署に戻って夕食を済ませた被疑者に面会ということもよくあります。

 

■5.当番弁護士は何をするのか

当番弁護士は、逮捕・勾留された被疑者・被告人と面会し、被疑者・被告人の相談にのり、被疑者・被告人の言い分や状況を確認し、これからどうなっていくのか、どういう権利が認められているのかについて説明し、これからどうしたらいいのかについてアドバイスいたします。

その上で、被疑者・被告人から弁護して欲しいという依頼があれば原則として弁護を引き受けることになります(東京の当番弁護の場合、受任する義務があります。)。

 

■6.当番弁護士に弁護を依頼する場合

当番弁護の依頼は無料ですが、当番弁護の後、正式に弁護を依頼する場合には、弁護士費用がかかってきます。

弁護士費用の用意の仕方ですが、何パターンかあります。

まず、自分あるいは家族に資産・収入がそれなりにあって弁護士費用を用意できる場合です。この場合、自ら当番弁護士と契約して弁護士費用を支払う必要があります(私選弁護)。

また、資産・収入があまりなく弁護士費用を用意することができない場合、被疑者の状況・事件の内容によって分かれます。

①被疑者が逮捕されただけの場合

被疑者は、刑事被疑者弁援助制度を利用して当番弁護士に依頼することができます。刑事被疑者弁護援助制度は、資産・収入があまりない被疑者が弁護士に弁護を依頼できるよう弁護士費用を立て替え、終了時の状況によっては立替分の精算を免除する制度です。刑事被疑者弁護援助制度を利用した場合、ほとんどのケースが免除となっているようです。

②被疑者が勾留された場合(原則10日の身柄拘束を裁判官が認めた場合)

この場合は、事件の内容によって分かれます。

重大事件の場合、被疑者は、当番弁護士に被疑者国選弁護人になって欲しいと依頼することになります。この場合、当番弁護士は、国に対し、自分を国選弁護士に選任するよう要請することになります。この場合の弁護士費用は国が立て替えてくれます。

事件が軽微な場合、被疑者は国選弁護人を付けてもらえません。そこで、この場合、被疑者は、刑事被疑者弁護援助制度を利用して当番弁護士に依頼することになります。

起訴されて被疑者から被告人になっていて法廷での裁判が予定されている場合、この段階で弁護人が付いていなければ、被告人は、当番弁護士に国選弁護人になって欲しいと依頼し、国に当番弁護士を国選弁護人に選任してもらうことになります。国選弁護人を付けてもらった場合、弁護士費用は国が立て替えてもらい、判決で負担させられるか負担させられないか明らかにされることになります。

 

■7.民事家事当番弁護士制度とは何か

最近、一部の弁護士会で民事家事当番弁護士制度というのも行っているようです。

民事家事当番弁護士制度というのは、民事事件や家事事件で裁判に巻き込まれたものの書類の書き方等がわからない人に、初回30分無料の法律相談を実施(※東京の場合)する制度です。

弁護士の知り合いがいない人が気軽に弁護士に相談にのってもらえるようにするための制度です。

民事家事当番弁護士制度を利用して相談を受けた人は、無料の法律相談を受けることができるだけでなく、弁護士に事件を依頼することもできます。

裁判を起こされて民事家事当番弁護士制度を利用したい場合、各地域の弁護士会の法律相談センターに民事家事当番弁護士制度があるかどうか確認してみてください。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

【画像】イメージです

*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

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冨本 和男 とみもとかずお

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