カラオケ「シダックス」の大量閉店。従業員が突然解雇されたら法的保障はあるのか?

料理のおいしさをセールスポイントに全国270店舗展開してきたカラオケチェーン大手のシダックスは、今年の4月から9月末にかけて累計で最大80店舗閉店する予定です。カラオケの楽しみ方が多様化し、食事で稼ぐという同社のビジネスモデルが合わなくなったからと報道されています。

固定費負担を少しでも減らそうとするのは、経営再建のABC。閉鎖にともなって、相当数の社員やアルバイトが解雇されると予想されます。従業員やアルバイトにとっては、それは収入の道が閉ざされることを意味しています。彼らの立場としては、できれば会社に何とかしてもらいたいもの。法的には、どのような救済措置があるのでしょうか?

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■解雇するためには「整理解雇の4要件」を満たすことが必要

まず、覚えておいて欲しいのは、経営不振に陥ったからといって、法的には無制限な整理解雇は認められていないということです。仮に、無制限に整理解雇が認められれば、経営努力をするよりも、安易にリストラをする経営者が増えてしまうかもしれません。

「判例では、『整理解雇の4要件』と呼ばれる4つの要件を基準にして、整理解雇がやむをえないことなのか、それとも解雇権の濫用に当たるのかを判断します」と答えてくれたのは桜丘法律事務所の大窪和久弁護士

要件の1つ目は「整理解雇の必要性」。解雇の他に本当に手段はないのかといった必要性の有無を検証します。2つ目は「整理解雇回避義務の履行」。配置転換、一時帰休、給与のカットなど解雇を回避するための努力をどこまでしたのかが問われます。

3つ目は「解雇する従業員選定の合理性」。仕事が遅い、欠勤が多いといった誰がみても納得できる法則に基づいて解雇をしているのか。法則がなければ、解雇は認められません。そして最後が「従業員への十分な説明」です。誠意をもって十分に話し合い、従業員に納得してもらった上で整理解雇を行ってくださいというわけです。

 

■4要件はアルバイトや非正規雇用にも適用される場合は多い

この4要件は正社員だけではなくアルバイトなどの非正規雇用にも適用されるとした判例も多数あります。一方、シダックスの今回のケースでは、閉鎖する店舗の大半は親会社が支配権をもたない株式保有持分法適用会社(株式の保有比率20%以上50%以下=関連会社)に所属していますが、連結対象会社(50%超=子会社)に所属する店舗の従業員と同様、解雇権の濫用が認められないことには変わりありません。

「シダックスが大量閉店にともなう整理解雇をする場合は、上記の要件を満たすのかどうかが問われることになるでしょう。仮に解雇が有効と認められても、即座に解雇はできません。雇用者側は30日前に解雇の通達をする必要があるからです。現在のように変化の激しい時代には、誰が、いつ、解雇を言い渡されてもおかしくはありませんが、不利な条件を押し付けられないように『整理解雇の4要件』は、ぜひ、覚えておいてください」。(大窪弁護士)。

 

*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間の間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。北海道紋別市で3年間、鹿児島県奄美市で3年間公設事務所の所長をつとめたあと、再度北海道に戻り名寄市にて弁護士法人の支店長として5年間在任。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)

*取材・文:ライター  竹内三保子(編集プロダクション・カデナクリエイト代表。西武百貨店入社後、紳士服飾部、特別顧客チームを経て、経済評論家の竹内宏に師事してライターに。「中小企業」「働く女性」「医療・介護ビジネス」などに関する記事を執筆。共著は『クイズ 商売脳の鍛え方』(PHP)『図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書』(マイナビ)など。)

*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)

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