粉飾決算が罪になるのは金額ではなく「犯行結果」次第?

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■有価証券報告書虚偽記載の罪

粉飾決算はその内容によって様々な罪に問われる可能性がありますが、株式を公開している会社の場合、金融商品取引法(旧証券取引法)の有価証券報告書虚偽記載の罪に問われる可能性があります。

有価証券報告書というのは、事業年度毎に内閣総理大臣に提出する必要がある報告書であり、企業の概況、経理の状況その他その他事業内容に関する重要な事項等が記載されている書類のことです。

有価証券報告書はその内容が公開され、企業への投資判断の材料となることが想定されています。

有価証券報告書虚偽記載の罪は、こうした有価証券報告書やその訂正報告書の重要事項について虚偽の記載をした場合に成立する罪です。

有価証券報告書の虚偽記載が罪となるのは、正しい有価証券報告書が公開されなければ、企業に投資した投資家が損失を被る危険性があり、企業に投資しようとする人がいなくなり、企業が育たず、国の経済が発展しなくなってしまうからです。

■「損失隠ぺい型」と「成長仮装型」

「損失隠ぺい型」とは文字通り損失額を隠ぺいするタイプの粉飾決算、「成長仮装型」とは「投資者に対し、飛躍的に収益を増大させている成長性の高い企業の姿を示し、その投資判断を大きく誤らせ、多くの市井の投資者に資金を拠出させ」(堀江貴文氏の第一審判決から引用)るタイプの粉飾決算のようです。

裁判例の中には、「損失隠ぺい型」と「成長仮装型」の違いを強調し、「成長仮装型」の場合、企業利益のみを追求した犯罪であって、その目的に酌量の余地がなく強い非難に値すると述べるものもあります(同判決)。

しかし、法律上は、「損失隠ぺい型」と「成長仮装型」とで取扱いが分けられているわけではありません。

同判決に対する控訴審判決も、「損失隠ぺい型」と「成長仮装型」で分け、成長仮装型の場合、粉飾金額は高額でなくても犯行結果は大きくなるとする第一審判決の評価について、「注目すべきものがある」としつつ、成長仮装型の事例はまだ少ないから「一般論として是認できるかは慎重を要する」と述べています。

 

■結局は「犯行結果」では?

そうすると粉飾金額が他の事例よりも少額なのに起訴されて重く罰せられる場合があるとすれば、もちろん被告人本人の反省の態度も影響するでしょうが、「犯行結果」が大きかったからということになるからでは思います。

そもそも有価証券報告書の虚偽記載が犯罪とされるのも、投資家が損失を被る危険性があるからです。

そうであれば、粉飾金額が大きいかどうかより、結果として投資家がどれだけ損害を被ったかで重く処罰されるかどうかが決まってもおかしくないでしょう。

粉飾金額が小さくても株式が上場廃止となれば投資家の損害は大きいわけですし、粉飾金額が大きくても株式の上場が維持され業績・信頼の回復によって株価回復の見込みがあるのであれば投資家の損害は上場廃止の場合に較べればそれ程大きいとは言えません。

堀江貴文氏を懲役2年6月の実刑とした第一審判決も、ライブドアの株価が急落するだけでなく株式が上場廃止になったことにより多数の株主が多額の損失を被った犯行結果の大きさを述べています。

東芝の場合、売上げの先取りや損失計上の先送りによって損失額を隠ぺいした「損失隠ぺい型」のようですが、上場廃止になっていません。

東芝の株価は、5月8日に483.3円でしたが、同日に決算の公表の延期を発表したことによって不正会計が明らかとなり、現時点(7月31日)で380.0円といったところです。

現時点で約22%の下落率です。

東芝の株価や株式が今後どうなるかはわかりませんが、東芝の「損失隠ぺい型」のケースでも多数の投資家に多額の損失を与えるような結果になれば、関与した経営者が起訴されたり処罰されたりしてもおかしくないと思います。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*hikaru / PIXTA(ピクスタ)

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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