■限定承認とは?
限定承認とは、被相続人の財産の限度で被相続人の負債を負担するという条件で相続を承認することを言います。
限定承認という手続を採れば、被相続人の財産が負債を上回っていた場合、残った財産を相続人はもらうことができます。
逆に、被相続人の負債が財産を上回っていた場合、被相続人の財産で返しきれなかった負債について、相続人は支払う必要がなくなります。
■限定承認のデメリット?
しかし、限定承認という手続を採るケースはほとんどありません。以下のようなデメリットもあるからです。
(1)相続人が数人いるときは全員でしなければならないとされていること
相続人が複数人である場合、一部の相続人が限定承認でやりたいと思っても、協力しない相続人がいればできません。
(2)ある程度の手間と時間がかかること
相続放棄であれば、必要な書類さえ揃えて家庭裁判所に行けば1日で済みます。
しかし、限定承認の場合、必要な書類を揃えて家庭裁判所に行くだけでは済まず、相続人の中から相続財産管理人を選任して清算手続を行う必要がありますので、さらに手間や時間がかかります。
(3)譲渡所得税がかかる場合があること
限定承認の場合、資産の譲渡があったものとして課税されます。譲渡所得税とは、資産の譲渡による所得にかかる税金のことを言います。
例えば、土地を7,000万円で取得し、地価が上がり1億円で譲渡したとします。この場合、3,000万円の所得が生じているので、これに税金がかかってくるわけです。
限定承認の場合、土地を売却しなかったとしても、譲渡したものとみなされて税金がかかってしまいます。
したがって、限定承認という手続を採るのは、相続人が1人であるか(他の相続人が相続放棄した場合も含みます。)複数人でも限定承認について協力が得られ、譲渡所得税の負担がないか譲渡所得税の負担を甘受しても守りたい財産(例えば住み慣れた自宅等)がある場合に限られてきます。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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