6月24日に放送された、NHKのドキュメンタリー番組でのこと。
企業名を隠した形で、技能実習生に厳しい労働環境で仕事を強いる様子が放送され、物議を醸しました。
そして放送後、この企業がどこであるか、ネットユーザーの間で特定作業がなされた結果、A社に嫌疑がかけられ、情報を信じた人からこの会社にクレームの電話が殺到することに。
しかし、それは事実と異なるものでした。
間違われた企業は法的措置を検討
間違われた形となったA社は、公式サイトで「当社は技能実習生を雇用していません」と疑惑をきっぱりと否定。
そして「今後このような状態が続けば法的措置も辞さない」と声明を発表しています。
また、NHK側もTwitterで
「現在ネット上で名前が上がっている企業は無関係です。苦情の電話は控えてください」
と声明を出すことになりました。
間違えられたA社としては全く関係ないにもかかわらず、勝手なネット上の憶測で悪評を流されてはたまりません。
混同するような放送をしたNHKを訴えることはできないのでしょうか?
銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士にお聞きました。
NHKを訴えることはできるか?
齋藤弁護士:「NHK側の報道を事後的に検証し、事実関係を確認し虚偽であると考えられる場合には、不法行為が成立し得るでしょう。
主に本件では、労働関係は実態・契約関係ともに事後的な検証になじみやすい分野です。
今後詳細な事実関係の調査がなされれば、可能性は十分あるでしょう」
場合によっては、訴えられることもあるようです。
ネットユーザーが罪に問われる事は?
NHKのケースに限らず、テレビや企業の炎上をきっかけにネットユーザーが特定作業を進め、それが間違っているにもかかわらず拡散され、間違いを受けた側が「風評被害」を受ける例は存在します。
現在このような場合、ネットユーザーが特定を間違えた責任を取ることは「極稀」です。
しかし本来は相応の罪に問われるべきではないかとの声があるようです。
誤った情報を元にバッシングしたネットユーザーが罰せられる可能性はないのでしょうか?
銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士にお聞きました。
齋藤弁護士:「罪に問える可能性は低いと思われますが、民事上の不法行為責任を負う可能性はあり得ます。
ただし、悪意を持って行っているのかが問題です。
現時点では軽過失にとどまるように考えられます」
個人情報は慎重に吟味を
ネットではしばしば炎上企業や人物の特定作業が行われることがありますが、なんの罪もない人が似たような境遇であることなどから誤って特定され、被害を受けることがあります。
そのような行為は、不法行為責任に問われる可能性があるということを認識するとともに、情報を簡単に鵜呑みにせず、吟味することが必要です。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)