婚約破棄した相手の家族から「苦痛を受けた」と慰謝料請求…支払う義務はある?

婚約中だったSさん(20代・男性)は、婚約破棄を決断します。その理由は家族からの反対。相手方の家族と反りが合わないそうで破局と相成りました。

2人はつきあい始めたあと一度破局し、その際脅迫的な行為を相手の家族から受けたそうです。そのことで不興を買い、心証が悪くなったとのこと。

その後家族の反対を押し切り復縁したSさんですが、家族に婚約を伝えると「結婚するなら勘当する」などといわれてしまいます。「幸せになることはできない」と猛反対されたSさんは、結局婚約を破棄することにしたそうです。

 

家族が慰謝料を請求

Sさんは婚約相手に事情を話したそうで、当初泣いていた彼女も最終的に受け入れます。一度結婚の約束をした2人にとって、「親がネック」で婚約破棄とはかなり寂しい結末です。

ところがこの話には続きがあります。婚約破棄後、相手方の家族が「精神的苦痛を受けたので慰謝料を払え」と主張してきます。彼女は慰謝料を主張していないそうで、家族が「苦痛を受けた」と言っているとのこと。

Sさんは彼女に慰謝料を払うことは致し方ないと思っているものの、家族が主張していることに違和感を覚えています。また、彼女自身は慰謝料を請求する意志がないそう。

婚約破棄時、家族が「精神的苦痛を受けた」として慰謝料を要求することは法的に認められるのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。

 

慰謝料を家族に払う必要はある?

理崎弁護士:「婚約は、将来において適法な婚姻をすることを目的とする契約でありそれを不当に破棄した者は慰謝料の支払義務を負うことになります。

婚約当事者の一方が婚約を不当に破棄した場合、慰謝料を請求することが出来るのは婚約を破棄された側の当事者ということになります。

すなわち、原則として、婚約を破棄された側の当事者の親としてはたとえ婚約破棄によって精神的苦痛を与えられたとしても婚約を破棄した当事者に対して慰謝料を請求することは出来ません。

もっとも、婚約を破棄した側の当事者が、婚約を破棄された側の当事者の親に対して積極的に精神的苦痛を加える目的で婚約を破棄したような場合には、慰謝料の支払義務が発生する余地はあるかもしれません」

まとめ

婚約破棄はあくまでも当人同士の問題であり、その過程や結末にについて家族側から慰謝料を請求することは、基本的にはできないようです。従って、Sさんも相手方に慰謝料を支払う義務はありません。
ただし、今回の件についてはSさんの振る舞いに問題があったことも否めません。責任を果たすなら、相手側の女性に慰謝料を支払うべきかもしれませんね。

 

*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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