システム業界では、仕事を取ってくる営業と作業をする開発部隊との衝突がたびたびあります。
営業側は「これだけの期間と金額で開発を」というのですが、営業的な都合が色濃く、「無茶」であることも。意見が対立し会議で一触即発の事態になることは少なくありません。
■改修要望に応じない社員も
また、納品後もユーザーからの改修要望を聞いた営業と開発の間では大きな乖離が。「これ修正できない?」と持ちかける営業と、作業の手間や費用対効果の観点から「できない」と回答する開発部で、しのぎ合いとなります。
通常仕事ですからお互いに着地点を探ることになりますが、開発の権力が強い会社では「この金額ではできない」「大掛かりな改修になるのでやりたくない」と作業に応じようとせず、話が進まないこともあるようです。
会社としてはそのようなサービス精神のない社員については解雇を検討したいところ。そのような措置は認められるのでしょうか? 法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。
■従わない社員を解雇できる?
冨本弁護士「結論から述べますと、いきなりの解雇は無効となると考えます。確かに、会社には従業員に対してさまざまな指示・命令を行う権利があり、従業員にはそれに従う義務があります。
したがって、従業員が従わない場合、契約違反ですから解雇したくなるとは思います。しかし、解雇は、労働者の生活に対する影響が大きく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。
従業員が会社の指示・命令に従わない場合、会社としては、関係者からの聞き取りによって指示・命令に従わない理由やその妥当性を調査すべきです。また調査の結果、従業員の方に問題がある場合でも、いきなりの解雇は社会通念上相当とはいえません。
まずは指導・注意によって改善を求めていくべきであり、それでも改善の余地がない場合に、はじめて解雇という手段を検討すべきなわけです」
「作業を断る」ことについての妥当性の調査、そして解雇の前に「注意・指導」を与えるなどして手順を踏まない限り、解雇は無効になる可能性が高いとのことでした。
お互い譲歩することが望ましいのですが、難しい場合はそれぞれに聞き取り調査をしたうえで、会社側が調整に乗り出すしかなさそうです。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)