子どものいる夫婦が離婚した際に支払いの必要性が発生する養育費。一般的に養育しないほうが、養育するほうに対して、自身の子どもが成人として自立できるまでに必要な費用を支払うものとされています。
当然ながら支払いの義務が発生した場合、親の責任としてそれを遂行するのが基本です。しかし、なかには義務を果たさず、支払われていないケースもあるようです。
このような場合、罰せられることはないのでしょうか? 和田金法律事務所の渡邊寛弁護士にお聞きしました。
■養育費不払いの罰則規定は?
「履行命令違反の10万円以下の過料のほかに不払いの罰則はありません。相手方が調停や審判で定められた養育費の支払いを怠っていた場合、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を申し立てることができます。
履行勧告に法的な強制力はありませんが、履行命令に従わないときは、10万円以下の過料が課せられます。
相手方が養育費の支払いをしない場合は、強制執行により口座預金や給料を差し押さえることも方法になります。養育費は長期間継続的に支払わなければならず、しばしば不払いの問題が起こります。
もっとも、履行命令違反の過料を除けば、他の金銭債権の取立回収と同様、罰則をもって支払いを強制する制度はありません」(渡邊弁護士)
■収入に変化があった場合変更は可能?
故意に払わないのは言語道断ですが、収入の減少や借金の増加で支払えなくなるケースや、離婚後成功し、収入が増加することもあります。
このような場合、予め取り決めた養育費を増額することはできるのでしょうか?
「合意当時に予測できなかった事情の変更があったときは、養育費の増減の変更をすることができます。
養育費は離婚の際に協議や審判で金額が定められますが、合意や審判のときに予測できなかった事情の変更があったときは、金額を増減することができます。
養育費の増減事由となる事情変更は、父母の収入の増減や就労状況の変化、再婚・養子縁組・新たな子の誕生等の家庭環境の変化、物価や貨幣価値の変動など、一切に事情を総合的に考慮して判断されます。
また、養育費の決定に際して実務上用いられる算定表は、子どもの年齢区分によって金額が異なります。そのため、子どもの年齢が上がったとき(従来の算定表では15歳)も養育費増額の事情変更となります。
新たな借金や借金の増大が事情変更となるかは借金の理由などによって異なります。例えばマイホーム購入のために住宅ローンを組んでも通常は事情変更にはならないでしょう。給料の大幅な増額は、事情変更となりやすいように思います」(渡邊弁護士)
合意時に予測できなかった事情の変更がある場合は養育費の増減が可能だそう。こと給与の大幅な増額については、事情変更となる可能性が高いようです。
養育費について悩んでいる人は、意外に多いと聞きます。知識豊富な弁護士に相談し、解決を図ってみてはいかがでしょうか。
*取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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