仕事は大概、雇用主と請ける側で契約書が存在するもの。とくに契約社員やフリーランスで仕事をしている場合は、雇用期間の定めやなどを事細かに文書にしておくのが一般的です。
しかし、極稀に「じゃあお願いしますね」などと、口約束で仕事を請けることがあります。フリーライターのBさんもその1人で、ある業者から口頭による執筆依頼をうけ、記事を書いていました。
ところが、5ヶ月程度経過したある日、突然「執筆依頼を停止します」とメールで告げられ、以降何の説明もなく連絡も取れなくなったそうです。
Bさんはその収入をアテにしていただけに、納得のいかないものを感じているそうです。なんとかならないのでしょうか? ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。
Q.口約束でしていた仕事を突然破棄された。不当性を訴えることはできますか?
A.契約の存在やその期間ができれば、不当性を訴えることができる可能性もあります。
「ライターへの原稿依頼は、委託契約だと思います。民法でいう請負に近い類型です。口頭でも契約は可能です。口頭契約の問題は、証明の問題です。
契約の有無・内容につき当事者間で争いになった場合に、書面があればともかく、口頭の時には立証が困難です。委託が継続していたという実績自体、一つの証明材料にはなると思います。
原稿のやりとり、委託料の振込等の痕跡などでその「実績」は示せるでしょう。それにより「契約の存在」を証明したうえで、いかなる場合に解除できるかですが、請負と解釈できる場合であれば損害を賠償しなければ解除はできません(民法637条)。仮に委任だとして同じでしょう。
ということで、その旨伝えて、交渉ということになるでしょう」(森川弁護士)
口頭だけに契約の立証ができるかどうかが争点となるようです。Bさんに限らず、フリーランスの場合口頭契約が続き、収入の柱になっているケースが少なくありません。
やはり仕事を請ける際にはなんらかの書面を残しておいたほうがいいかもしれません。
Bさんのようなケースになってしまった場合は、契約の存在やその継続性や期間を証明できるものを集めたうえで弁護士に相談するなどし、対策を考えましょう。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*chombosan / PIXTA(ピクスタ)
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